硝酸の窒素・酸素安定同位体比

越境大気の影響を受けている降水の硝酸の窒素・酸素安定同位体比が、汚染源の指標になるか検討しました。酸素安定同位体比は降った場所の気温に規定されているらしく、望み薄でした。窒素安定同位体比は多くの論文で汚染源の指標になるとされていますが、今回の調査地では使えないとの結論に至りました。「使えない」ことを初めて見つけたのならまだやりがいがあるのですが、数年前の報告が「使えない」理由を極めて論理的に説明していました。となると今回のデータから言えるオリジナルなことは、汚染源の指標として硝酸の窒素安定同位体比は使えないけど、非海塩硫酸は使えるかも、ということくらいになりそうです。
このデータは8年前の学生が出したものです。降水・河川水中硝酸の安定同位体比に関する研究は、この論文で打ち止めにしようと思います。もともと安定同位体比分析に興味を持ったのは、サンゴ礁では窒素固定系が卓越していることを窒素安定同位体比で示せないかと思ったからでした。思ったとおりとてもクリアに議論できたのですが、硝酸の安定同位体はそれと比べてクリアな議論ができにくく、シンプルな議論を重ねるタイプの私には合っていないようです。