子供だからこそ本物を −化石チョコ誕生物語(1)

地球惑星合同大会に参加された方々には、販売コーナーでアンモナイト三葉虫の化石そっくりのチョコレートを見かけたことでしょう。
この化石チョコレートを開発した産総研(元地質調査所)の研究者の方から、ある雑誌の取材に同行して誕生秘話をうかがうことができました。一昨年まで私が務めていた職場で、みなさんどれほどお忙しいかよく分かっていますから、こういう機会でもないとお話をお願いするのが気が引けます。それで、雑誌の編集担当から紹介をお願いされたときに、渡りに船とお引き受けしたわけです。

チョコレートを作ろうと思い立ったのは、地質調査所が地質情報を流す相手である博物館や各地域の地学関係者が、さらに一般に知識を流すきっかけになるにはどうすればいいか思案した結果なんだそうです。たとえば博物館で化石を見た方がお土産にこのチョコを買って、「こんな化石をみたよ」とチョコレートを使ってコミュニケーションが始まればどうだろう、と。

それで、ありがちなフィギュアではなく、本物の化石と全く同じにしたそうです。「子供だまし」ではなく、「子供だからこそ」(とその方は強調)、大人も惹きつけるくらいの本物で勝負。添付の解説書を見ながら、化石を観察するようにルーペでチョコを観察すると、例えば恐竜の歯の化石でしたら、細い筋の1本1本まで本物と同様に観察することができます。ちなみに、チョコ工場で試作品をルーペで観察していたら、「チョコをルーペで見る人って、初めてです」とチョコ会社の社長に言われたそうです。そこまでこだわった為、およそチョコで作る造形の最高技術を使っていると考えていいそうです。また材料も明治製菓の最高級用のものだそうです。解説書には英訳もありますので、海外へのおみやげにもなりそうですね。

産総研の地質標本館では、定期的に、子供達を対象に化石のレプリカ作りを体験する会を開いています。化石チョコには、このレプリカ作りの技術が活かされています。レプリカを見ていて、「これでチョコを作ってみよう」と思い立ち実験。次にゼリーはどうかとやってみたら、プヨプヨしたできばえに「これは何だか違う。。。」と感じて、あとは迷わずチョコレート1本で企画を進めたそうです。

化石のレプリカはどんな形でも作れますが、チョコレートの場合は、最後に型から抜き取れる形でなければならない、という制約があります。それでチョコのうち、ビカリエラの棘は、どうしても原型だと抜けなかったので左右で少し違った形状にしたのが、本物へのこだわりのなかで苦渋の決断だったとか。

写真は化石のレプリカ型で、歯科で型どりに使われるゴムと同じ素材です。チョコレート型は実際の化石と同じ大きさですが、チョコレートは固まるときに5%程度収縮しますので、それも本物とのわずかな相違点となります。右側にあるのは一眼レフ用の偏光フィルターです。大きさの参考にされてください。