「沿岸○○研究グループ」最後の日

前職の産業技術総合研究所は4月1日から3期目となります。それと同時に、2001年以来、産総研(旧地質調査所)で私が所属していた「沿岸○○研究グループ」(○○は名称が3回変わった部分)は本日で解散となります。ずっとリーダーを務められてきたSグループ長、長い間お疲れ様でした。
このグループに最初から最後まで所属したのは計5名。Sグループ長の「各自の長所に応じて自由に研究開発を進める」との方針のもと、地質調査所でも最高の成果をあげてきました。
まず、地質調査所自体が、我が国の地学研究に多大な貢献をしています。
過去11年間(1999-2009)の被引用数をGeoscience(EssenRal Science Indicators)でみると、地質調査所は東大、JAMSTEC、北大、京大に次いで国内5位です。大学は教員だけでなく学生やポスドクなども含まれますから、研究者数当たりにすると、地質調査所はもしかしたら大学を抜くかもしれません。また世界の地質調査所で比べると、アメリカ、カナダに次いで3位、4位がイギリスです。これも、USGSの職員の数を考えると、Geological Survey of Japanの職員のパフォーマンスは非常にハイレベルにあると思われます。
その中でも「沿岸○○研究グループ」は、まず「機器開発」という、地質調査所の他の研究グループには見られない分野で成果をあげてきました。2001年のグループ結成以降に獲得した特許は国内(出願2,登録7,実施契約2)、海外(出願2,登録7)です。
そして研究においても、先ほど紹介した被引用件数(地質調査所全体で2001〜2010現在の総数9508件)のうち13%にあたる1263件が「沿岸○○研究グループ」メンバーによるものです。産総研のホームページでざっと数えたところ、3月31日現在、旧地質調査所系は1センター36グループあります。つまり平均すれば1グループは3%貢献することになるのに対して、このグループはその4倍のパフォーマンスをあげてきたのです。
このグループは各自が外部予算を獲得して個性的な研究を進めてきた為に、所全体で取り組んでいる大規模プロジェクトに参加していませんでした。今回の解散は所全体のミッションとの兼ね合いでの結論かもしれません。ただ、現在走っている沿岸域地質・活断層調査プロジェクトのきっかけとなった「高分解能マルチチャンネル音波探査装置」そのものは当グループによる研究成果であることを考えると、トップダウンだけでなく、ボトムアップ型の研究チームがあることで、社会に貢献できるシーズが育つのではないかと思われます。
私自身このグループにいて、社会が要請していると自分が考えた問題を外部予算に提案し、プロジェクトリーダーとしてグループ内外のご協力を得て仕事を続けてきました。こういうスタイルで研究できたこと、研究を通じて社会に貢献できたのは、Sグループ長のおかげだと思います。グループ最後の日にあたって、改めてお礼申し上げます。