参考書18「吸光光度法ノウハウ」

陸水研は生態学をメインにしていると誤解して訪ねてくる学生さんが結構多いのですが、陸水学の基本は地球科学です。中でも私は博士論文以来、生元素循環によって環境動態を定量化することを専門にしてきましたので、吸光光度法による栄養塩分析は経験済みの学生さんに来て欲しいというのが本音です。
とはいえ、水環境に関してやりたいことがある学生さんはWelcomeというスタンスなので、現実には化学分析をやったことがない学生さんが大部分です(文系の学生さんも来ますし)。
これまでは化学分析に初めて取り組む学生さんを意識して、「水環境論」で統計の初歩、精度管理、メニスカスの見方から教えていましたが、今年度からカリキュラムが変わって、当専攻の夏学期の科目は全てオムニバスになりました。
どう対処しようか困っていたところ、この本に出会いました。私が「水環境論」で教えていた、分析を行うための室内環境や考え方、データの持つ意味、器具や器機の取り扱い、試料の採集や処理・保存、分析操作などが、学生さんがやってしまいそうな失敗例も紹介して、具体的に解説されています。
陸水研のゴールデンウィーク分析講習会までに、化学分析が初めての学生さんは読んでおくように。
陸水研では分光光度計以外の機器分析も行いますが、この本で書かれている分析に関する基本は、他の分析にも通じます。私の場合は博士課程2年になって、海洋学関係者に信頼してもらえるアンモニアの分析を身につけたくて、当時海洋研におられた小池勲夫先生の所に押しかけ弟子入りしました。小池先生からは、1ヶ月毎日、アンモニアのブランクを測るように命じられました。その時にいろいろ学んだり工夫したことが、後日、塩素や酸素の滴定分析や、就職してから習った安定同位体比分析の精度管理に役立っています。

吸光光度法ノウハウ―ケイ酸・リン酸・硝酸塩の定量分析

吸光光度法ノウハウ―ケイ酸・リン酸・硝酸塩の定量分析