陸水研OGで「極ガール」として知られる田邊優貴子さんの筆頭論文が、昨日公開されました。
Scientific Reportsvolume 9, Article number: 4639 (2019)
彼女が陸水研でポスドクをしていたときに、当時修士学生だったH君と南極で取ってきたデータや化学分析結果をまとめたものです。
対象は南極湖沼に生息している、「コケ坊主」と彼女らが呼んでいる光合成生物です。あいにく論文には「コケ坊主」の写真がないので、下記の産経新聞のリンクでご覧ください。
https://www.sankei.com/photo/story/news/170208/sty1702080017-n1.html
田邊さんとは昨年9月にバイカル湖の航海に一緒に行って同じ船室だったものですから、消灯してもコケ談義を始めてしまうと「やめられない、止まらない」状態で夜更かしが続きました。世界の湖沼におけるコケの総説も、いつか書いてもらいたいです。
(追伸)
論文では、濁った湖沼の方が透明な湖沼よりもコケ坊主の成長が活発であることを示し、紫外線が少ないからだと推定しました。オゾン層がある現在の地球の水の中でさえこうなのですから、酸素が少なかった頃の地球は、紫外線の影響が想像以上にシビアだったと思われます。なので私は、その頃の海は青色ではなくオレンジだったのではないかと考えています。南極でも地上に生えている地衣類はどぎついオレンジ色で、その色素で紫外線の影響を防いでいます。なので紫外線がきつかった頃の植物プランクトンは紫外線を防ぐ色素を高濃度に持っていて、どぎつい色をしていたのではないかと。また酸素が少ない為、紅色硫黄細菌など、嫌気性の光合成細菌も海の表面近くにいて、その赤色の影響も強かったのではないかと思っています。
そんな話(頭の体操)も、本郷の「水圏環境学」で時々しています。日本の水危機だけ話していても、聞いてる方もつまんないだろうと思って。