「一般に浮葉植物は沈水植物より波あたりに弱い」という、一目瞭然そうなこともきちんと出典をつけたいという知人がいて、いろいろ検索したのですが、これという文献が出てきません。「このあたりの総説でどうでしょう?」と2006年のReview論文を送ったら、その知人はその論文から孫引きして、下記の本にある記載が最も適切だと思うが持っていないかと言われました。
Hutchinson GE. 1975. A Treatise on Limnology. Volume 3. Limnological Botany. John Wiley, NewYork.
ありがたいことに西條八束先生から陸水学の名著をかなり頂いていて、Hutchinsonの上記名著も当然ありました。お恥ずかしいことに、Volume3が実は水草を対象にしていたことに、今回、初めて気づきました。波との関係や水草が生産する有機物などもいろいろ書いてありました。
日本では水草による水質浄化とか自然再生とか、生態学をやっている方でも相当な誤解した説を流布されていますが、欧米でそういった誤解が目立たないのは、こういったHutchinsonの教科書が読まれているからかもしれません。昨年11月22日に紹介したホーン&ゴールドマン「陸水学」でも、富栄養化湖沼の水草は除去しなければ水質の悪化を招くことがきちんと解説されていました。
日本でもっと陸水学の考え方を普及することは、やはりとても重要だと再認識しました。
- 作者: George Evelyn Hutchinson
- 出版社/メーカー: John Wiley & Sons Inc
- 発売日: 1975/06/01
- メディア: ハードカバー
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