水草を植える口実に「水質浄化」は、もはや通じない

地環研(地方自治体の環境研究所)の知り合いから、環境省が自然浄化対策のガイドラインのようなものを作成していると聞いているが、ヨシ帯や水生植物を利用した質浄化効果というものは微々たるもので、「水質浄化」を目的とした事業としては成り立たないと感じている。生態系サービスの増大という視点であれば、事業を効果的なものにして行ける可能性があると思うが、とのメールを頂きました。
現場で環境をきちんと見ている人にとっては、水草帯造成に「水質浄化」効果がないことは、いくら高名な先生がそう言っていても、このように納得のいかないことなのです。
「あれは一部研究者の勘違いが広まっただけで、水質汚濁をかえって強化しているだけです。実際、ヨシを大々的に植栽した湖沼ではヨシゴミによる漁業被害も起こっていますし、環境省も第二のホテイアオイみたいなことはしないんじゃないでしょうか。」とお答えしました。
欧米で水草を植えることで水質がよくなるとしている「水質」とは、日本のように有機汚濁負荷を減らすという意味ではなく、透明度を高めることです。だから水草を植えることで水流が減って懸濁物が沈降することはよいことであり、トラップした有機物による酸素消費の増加や、水流が減ることによる酸素供給の減少によって酸素が減っても構わないわけです。
日本の場合は有機汚濁によって酸欠が頻発するようになり、それを防ぐために有機物の指標であるBODやCODの目標値を定めて削減を図っているのですから、水草を植えることはかえってマイナスになります。「水草が栄養塩を吸えば、植物プランクトンになる有機物が減るではないか」と言われることもありますが、水草だって有機物ですから植物プランクトン水草に代わっただけで、汚濁であることに違いはありません。
しかもアサザ発癌性・突然変異性が疑われているトリハロメタンの生成能が高い有機物を出すことが、陸水研U君の修論研究で明らかになりました。霞ヶ浦の水を水道水源にしている我々にとって、もともと無かったアサザがどんどん増えることで、健康にも影響するかもしれません。
水草を植える口実に「水質浄化」は、もはや通じないと思います。