日本人の9割は正しい自己紹介を知らない

私が国際委員になったり海外から招待講演を依頼されるようになったのは、交通事故で脳をやられて、英語がほとんど話せなくなって以降です。それでも海外で楽しく仕事できるのは、たぶん、高校の1年間、アメリカで研究者の家庭(マサチューセッツ工科大学の教授)にホームステイした経験のおかげだと思います。
たとえば本書では「海外では、同じ会社にずっと勤務してきたということは『ひとつの会社にしか雇用されなかった残念な人』と見なされます。」と解説しています。大学の教員も同じで、学部から教授になるまでずっと○大というのは海外では奇異に感じられることを、私は高校の時に既に気づいていました。
また、海外に出たら、様々な意見や考えがあるのが当然で、「違いがあって当然、だから楽しい。」というスタンスで議論を楽しむマインドが重要です。私は日本でこれをやってしまってしばしば反省するのですが、海外では全然苦労しません。本書でもこのようなスタンスから、どのように議論を進めるかが解説されています。
本書では一方で、日本人ならではのメリットをうまく活用するポイントも解説されています。本書でも指摘されているように、一般に日本人は謙虚で、ハッタリをかますことが少ないと思われています。なので、国際会議などで私がたどたどしい英語で発言しても、真剣に聞いてくれることが多いです。LOICZの科学委員をしていたときなど、委員長をしていたAさんが「Whatever Masumi said so, it is so.」なんて発言して、驚いたことがありました。
巻末に自己紹介やスピーチのネタを英和双方で掲載してあります。
初めて海外での学会発表に挑戦する若手には、どうやって自己アピールするか参考になる本だと思います。