学部生実習の参考書

私は柏キャンパスにある自然環境学専攻の教員なのですが、この専攻は旧理学部地理学教室(現、地球惑星専攻)の教員も兼ねている関係から、来年度の巡検も担当することになって、早くもシラバスを作るよう依頼がありました。大方は主を務める地球惑星プロパーの教員の方に作っていただいたのですが、今回は関東地方の川を上流から海まで巡検しようということになっていたので、彼が参考書としてあげた「湖沼調査法」だけでは不十分だと思い、「せめてWetzelのLimnologyくらいは挙げておいたら?」と勧めたら「今の学部3年を、あなたの頃の学部3年と同じレベルと思わない方がいい」との回答。日本語であること、地形学さえ全く白紙と思った方がよいと言われ、散々迷ったあげく、「です・ます」調で書かれていて、私が学部3年の頃の前期に地形学や第四紀学などで習っていたようなことが優しく解説されている「流域学事典」を参考書としました。

流域学事典―人間による川と大地の変貌

流域学事典―人間による川と大地の変貌

学生の学力低下や意欲の低下が取りざたされる中、少なくとも陸水学研究室のメンバーの中では、例えば「統計学、まったく習ったことないわね」と見て取れる学生はいるものの、たまたまそういう機会を逸したという程度で、それはこれから自習すればよい話。研究を進める上で大切な、問題発見能力、調査・実験のセッティング、文献の収集・整理や考察などに問題があると感じた学生は、いまのところ皆無で、学部までは全く違うことを習っていたのに、短期間でよく勉強していると感心しています。
来年度は夏休みの実習、冬学期の講義を通じて学部3年生の東大生の現状を観察できるわけで、それはそれで楽しみです。

(追伸)
このブログの閲覧数が、いつのまにか30000を越えていました。思いがけずたくさんの方々に読んでいただけて、大変嬉しく思っています。現役の陸水研メンバー、そして将来の陸水研メンバーと、主に学生さんを読者に想定して書いているのですが、それ以外の方もおられることがメールでのご連絡から分かり、恐縮することも度々です。逆に、陸水研に行くとこのブログの話のネタにされると、学生さんのリクルートにはかえって逆効果になってないかと、心配になるこの頃です。。。