今も昔も変わらぬものは。。。

その昔、東大理学部地理学教室の修論は「必ず本人自筆」との決まりがありました。パソコンによる日本語ワープロがようやく普及し始めた頃と言うこともあり(確か「松」とかいうソフトだったような)、プリンターの解像度も悪く、英語のワープロは「自動タイプライター」に接続して打ち出していました。簡単なグラフも大型計算機センターに行って、XYプロッターなるものを使っていました。
とは言えどうして「本人の自筆」と「本人」が入るかというと、当時の地理では学生間の結束が堅く、図表などは同輩だけでなく、先輩後輩総出で分担して書いていたからでした。提出後の修士論文も、教員が回覧している間に院生も全員が目を通し、コメントを直接書き込んで発表会に備えていました。こういう状況を教官方はご存知で、せめて本文だけは本人に書かせようとされたのでしょう。
この「本人の自筆」という原則を変えたのが、実は私でした。指導教官の阪口先生に「あのう。。。もう卒論で十分お分かりと思うんですけど〜、私の字ってどんなに頑張っても自分でも読めないしい〜、修論はあの倍の長さになりそうなんで〜、ワープロで書かせていただけませんでしょうかあ?」
予想通りアッサリ許可されました。以来、地理の修論ワープロになりました。
時が過ぎ、今やワープロには変更履歴機能やらコメント機能までついて、かつ学生が大学から送ってくるファイルを出先でメール添付で受け取って、移動中に添削できるという、私の修士の頃には考えもつかなかった状況になりました。ホントよかったですねえ。もし私が手書きでコメントしてたら、その解読だけで締め切りには間に合わなかったでしょう(実は私の海洋研時代の指導教官K先生も私に負けず劣らずの悪筆、かつ左きき独特の字体で、解読だけに1ヶ月を要した。。。)
とは言え、修論執筆がぎりぎりになってしまうのは、今も昔も変わらないようです。最後のひとりが途中の作品を送ってきましたけど、まだ英語要旨とかゼンゼンだし、本当に間にあうんだろうか?

追伸:まだ未完だった1名、考察の残りが今朝届き、昼前に和文要旨と英文要旨が到着。13時半までの会議終了後は、かかりっきりで添削して16時に返送。それからは見事な集中力で打ち出しと製本を終わらせたのでしょう。何とか17時の締め切りには間に合ったようです。
学生さんにはたくさん来てほしいですけど、修論の添削を考えると、一学年3人が限度かなあ。受験の面接のときに「修論の初稿を締め切り3日前には出す自信がありますか?」と質問してみようかしら。