地球史の童話

本年6月9日に日本学士院エジンバラ公賞を受賞された和田英太郎先生の「童話」がアップされているサイトを見つけました!
エジンバラ公賞受賞対象の研究題目は「流域単位の生態系の多様な構造の解明と環境変動への応答に関する研究−とくに安定同位体フィンガープリント法を駆使したその総合−」と、なんかとっつきがたい雰囲気が漂っていますけど、この童話は、物質循環研究でいかにクリアに地球を読むことができるか、感激的にわかりやすく描かれています(イラストもかわいい)。高校生以上なら、完全に理解できないまでも筋は追えますから、是非ご一読ください。
和田先生には、就職した30歳のときに初めてお目にかかりました。出身の東大海洋研生化学部門(当時)で助手をつとめられてから三菱生命研に移られ、さらに京大生態研に移動される、その年のことでした。地質調査所に就職した私のミッションは、サンゴ礁二酸化炭素のシンクかソースか解明することだったのですが、もし窒素固定系が駆動しているのならシンクである確率が高く、それを証明するには安定同位体比分析がベストだと考えました。海洋研にも質量分析計はあったのですが、「文科三類出身者がさわれる装置ではない」と関わらせてもらえなかったので(GCさえさわらせてもらえなかったなあ。まあ、確かに不器用でしたけど)、就職したら絶対にどこかで習うんだと心に決めていたこともあって、和田先生に上記の展望をご相談したのでした。先生ご自身は移動されてしまうということで、当時、同じ生命研におられたM先生に紹介くださり、イチから教えていただけることになったのでした。
当時はオートサンプラー付きの元素分析計からガスを送るのではなく、ラインでピュアにしたガスをデュアルインレットにいれて圧力を合わせて測るという手間のかかる時代だったので、10点たらずの結果で論文にしました。数は少ないものの、今でも自画自賛したくなるくらい美しい結果で、サンゴ礁では窒素固定が卓越していることを示せました。その後、同様の報告はあっても脱窒が駆動しているという報告は聞きませんので、やはりサンゴ礁二酸化炭素のシンクである確率が高いと思っています。