テニュア今昔

住まいがある二の宮地区は産総研や国環研、NASDAなどに囲まれています。先日ジョギングしていたら、そういった研究所に今年からポスドク研究員で来ているS君にばったり会いました。
彼とは手賀沼で共同研究していて、投稿論文がペンディングになっています。「進んでる?」と尋ねたら、いまいるところでテニュア(=終身雇用資格)をとるには、そこに入ってから始めた仕事で3年目の審査時に国際誌2本が必要なので、そちら優先ということでした。
私の場合は学位を取ればそのままテニュアで雇用という条件で就職し、それから3年でL&O2本を含み3本をIFのある国際誌に出しましたが、すべて学生時代の仕事でした。雇用されてから始めたサンゴ礁関係の仕事を2本L&Oに載せたのは4年目だったので、今の基準でいくとテニュアはとれなかったかもしれません。
もっとも就職した翌年に長男を出産したので、その期間をさっ引けばぎりぎりセーフかも。。。いや、今の女性研究者はそういう厳しい競争があるから、結婚しても子供は後回しなのだろう(私みたく30代で子供2人は夢のまた夢?)などと考えると、今の若手はかなり厳しい状況にあると、改めて思います。
ただ、そのような厳しい競争によって、環境研究の質が上がっているかと言えば、必ずしもそうではないように感じます。自画自賛になりますが、30代前半で出したL&O4本はそれなりに面白い仕事で、特に、サンゴ礁で窒素固定が卓越していることを示した論文は、沿岸域の窒素循環像を変えるポテンシャルを秘めていると思っています。就職して2ヶ月、100本だったか200本だったか、朝から晩までサンゴ礁関係の文献を読んでじっくり仮説を考えて、それなら同位体で証明できると分析法をイチから教えてもらうところから始めることができたのは、テニュアを取るために急いで結果を出す必要が無かったからでした。