環境ホルモン学会ニュースレターの最新号の巻頭言タイトルです。
「環境ホルモンの作用に対する理解も、当初のエストロゲンをミミックするものから、様々な核内レセプター、膜レセプター、それらの相互作用を介したシグナル伝達をかく乱することによりその作用を顕すとの認識に変わってきていると思います」
つまり生殖関係のかく乱だけではなく、およそすべてのシグナル伝達が化学物質によってかく乱され得るという、非常に恐ろしい可能性が見えてきてしまっているわけです。でもこの文章を読んで「非常に恐ろしい」と感じるのは何割くらいでしょう?
物理現象は方程式で記載され、生化学反応は化学式で掲載されます。それは秘密趣味だからではなく、そういった言葉で理論を展開することが真実につながると、長い蓄積の上で合意されているからです。それが意味するところを理解しないと、英単語がわからないと英会話くらい、内容が理解できなくなります。化学物質の影響について、精子が減少するらしい、オスがメス化するらしいという話ならイメージ的に理解できても、さらに研究が進んでシグナル伝達(ATPやプロトン、Naという話も当然でてくるでしょう)となると、市民レベルでは一転無関心になるのかもしれません。
折しも今日、最高裁判決も無期懲役となったDNA鑑定が誤りだったと、19年も経ってようやく認められました。その当時のDNA鑑定の信頼性について司法が正当に評価できなかったのは、一般レベルで新しい科学に対する理解が十分でなかったことを現していると見るのは、短略に過ぎるでしょうか。
科学の知識は日々新たになっていきます。アメリカの陸水海洋学会のニュースレターでメタゲノムが解説されていたように、数年前はほんの一部の最先端だった知識が、環境を研究する上で常識になるでしょう。私たち大学人が、日々新たになる「自然科学全般としての常識」をフォローするのは当然です。それだけではなく、一般市民レベルでも、その科学的常識や考え方が日々新たにならないと、環境を守っていくのは難しいと思われます。