農業の構造改善事業と水質

このところ、S湖近隣にお住まいの方から時々お問い合わせが来ます。その方は、S湖の水質は魚からみると悪化していると感じています。その原因として農地の構造改革ではないかということです。
私はフィールドワーカーなので、現地を見ないで物をいうことは差し控え、他のところでこういう例が報告されています、という回答をしています。この方と同様の考えは、例えば琵琶湖について滋賀県立大のK先生は「農業の構造改善や河川・湖岸工事が湖の水質と魚に影響を与えているのではないかと疑問を持つようになりました。」と言われています。別の方が下記の書籍で「濁水の排出という上流での人間の行為が、最下流に位置する琵琶湖に水質問題を発生させた。問題を起こしたのは土砂だけではない。多量に施用された化学肥料や除草剤などの農薬が問題をいっそう深刻化させている。」と書かれています。
ここで除草剤ですが、私の共著「里湖モク採り物語」で、1950年代半ばからの10年間で、日本の沈水植物が急激に減少したのは除草剤が原因であると指摘しました。この本を読まれたS湖にお住まいの方が「今日そのような除草剤が許されているのか」と質問されました。現在はおそらく多くの場所で、除草剤が原因で沈水植物が復活しないのではなく、透明度の低さやアメリカザリガニなどの外来種の食害で復活できないのだと考えています。琵琶湖で水位低下によって湖底まで光が届き、一気に沈水植物が復活した例は、上記の仮説を支持していると思います。