60年前に起こった湖沼生態系の激変

生態系の根幹は光合成を行う一次生産者が担っています。ですので、主な一次生産者が水草なのか植物プランクトンかで、同じ湖沼でも生態系は激変します。このため湖沼における自然再生活動は、水草の復活を目指しているものが多々見られます。しかし、どのような状態がその水域の本来の生態系だったのか、それが無くなったのはなぜなのか(あるいはどうしたら再生するのか)について、首をかしげたくなるような活動も少なくありません。特に気になるのは、水草がなくなった理由を護岸工事など、目で見える事象に決めつけていることです。このブログでも何度か指摘していますが、琵琶湖や宍道湖ではコンクリート護岸のままで沈水植物が復活していますし、霞ヶ浦で一番目と二番目に広いアサザの自然群落があるところは、垂直コンクリート護岸です。護岸工事が原因であれば、なぜ護岸されたままでこれらの植物が繁茂しているのでしょう。
「里湖モク採り物語」という本で提示したように、平野部の湖沼で沈水植物が消滅した原因は、目でみることのできない除草剤だと考えられます。
同じ事がこれから経済成長が始まる国で起こらないよう、宍道湖・中海の事例を中心に、この60年間で激変した生態系の様子を下記論文で紹介しました。

Herbicide-induced macrophyte-to-phytoplankton shifts in Japanese lagoons during the last 50 years: consequences for ecosystem services and fisheries

Springerと契約している組織だと、下記からPDFをダウンロードできるようです。
http://www.springerlink.com/openurl.asp?genre=article&id=doi:10.1007/s10750-012-1150-9