表記の論文が水環境学会誌4月号に掲載されました。
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要旨
低鹹汽水湖である宍道湖における酸素消費過程の現場観測と,宍道湖湖心部堆積物と底層水を用いた酸素消費実験を2005年の夏季と秋季に行った。実験においては酸素消費と共に,有機物指標(COD(Mn),COD(Cr),TOC)の濃度がどのように変化するかを検討した。現場観測では,隣接する中海から湧昇する貧酸素化した高塩分水が,宍道湖堆積物上を移動するにつれて溶存酸素濃度が上昇する状況が観測された。また成層内部の溶存酸素濃度は風によって引き起こされる湖水の流動に影響されており,底層の貧酸素化は風速の低下により成層内部の流動が弱くなった場合にのみ発生すると考えられた。底層水を用いた実験では,溶存酸素濃度の減少と有機物指標との間に対応が認められなかった。底層水と堆積物を用いた酸素消費実験では,溶存酸素濃度がゼロになるまでに2日以上を要した。これらの結果から,COD(Mn)であらわされている有機物量を削減するよりも成層状態が長期に渡らない対策を立てる方が,宍道湖での貧酸素化の緩和に有効であると考えられた。