宍道湖でのシリカ欠損説

昨日は宍道湖シジミ漁師さんとの懇談会に出席しました。
近年の宍道湖では珪藻優占からラン藻優占にシフトしていて、これがシジミの成長低下につながっている可能性があります。この原因として私は塩分と除草剤使用量の減少ではないかと考えているのですが、意外なことに漁師さんは、上流に建設されたダムの影響だと考えていました。いわゆるシリカ欠損説です。
宍道湖の水質を見ると溶存態シリカは窒素の10倍、リンの100倍レベルの濃度でありますので「それはあり得ません」とお答えしたのですが、全く納得していただけませんでした。
そもそも、地元の水産関係の研究所はそんなことを伝えてませんし、どうして漁師さん達が「シリカ欠損説」を知っているのか不思議でした。鉄欠損については漁民の方が「森は海の恋人」で解説されているので耳に入るかもしれませんが、シリカについては一般にはあまり伝わっていないと思います。「アサザによる水質浄化」のように、水質や化学量論に疎い研究者がイメージだけで吹聴したのかもしれません。
宍道湖はかつて淡水化されようとしたときに、西條先生、西村先生、奥田先生など全国から集まった研究者が「淡水化したら水質が悪化する」との声明を出し、最終的に中止になりました。自然科学の議論が正しい選択を導いた好例でした。しかしその宍道湖や中海で、ヨシを植えたらシジミが増えるとか、堤防を切ったら水質がよくなると科学的根拠が極めて乏しい主張を研究者が唱え、湖岸のかなりの面積にヨシが植えられたり、堤防が切られてかえって貧酸素化したなど、情けない状況になっています。大切な宍道湖を滅茶苦茶にされるのは許せないので研究者として正面切って批判を展開していますが、今回のシリカについても「宍道湖シリカ欠損が生じている」と発言している研究者がいたら、事実を持って批判しようと考えています。

(追伸)
窒素循環に関心のある学生さんは、下記を読んでおいて下さい
Vol. 495 Number 7441
地球: 完新世における全球の窒素循環の変化
Changes in global nitrogen cycling during the Holocene epoch p352
A global synthesis of stable nitrogen isotopic values in lacustrine sediments indicates a period of declining enrichment from 15,000 to 7,000 years before present, probably in response to terrestrial carbon sequestration.
Kendra K. McLauchlan, Joseph J. Williams, Joseph M. Craine & Elizabeth S. Jeffers
doi:10.1038/nature11916