わずか8立米の水銀を管理できない国が使用済み核燃料を管理?

本日2月29日付けで、化学物質問題市民研究会などが政府に対して「水銀輸出禁止法制定を求める声明」を提出する予定です。以下、化学物質問題市民研究会の会報「ピコ通信」162号の記事から抜粋します。
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先進国から輸出される水銀は、アジア、アフリカ、南米の途上国の小規模金採鉱現場に送られ、金鉱石から金を抽出するのに必要な金と水銀の合金(アマルガム)を作るのに使用されているそうです。これにより、世界に数百万人いると言われる金採鉱に従事する貧しい労働者やその家族の健康が水銀により蝕まれ、また使用された水銀は大気や海に放出され、世界中に広がる環境汚染をもたらしています。
このような状況を鑑み、EUや米国は、2008年に水銀輸出禁止法を制定しました。これに日本も続けば、2013 年に制定される水銀条約において水銀の国際貿易の制限を強化し、水銀輸出禁止を実現する道筋が見えてきます。
残念ながら、日本は今でも年平均100トンの水銀を輸出し、これまでの政府の回答は下記のような趣旨だそうです。
・日本の余剰水銀の多くは非鉄金属精錬プロセスからのものであり、日本ではある会社が回収を商業的に行なっている。
・回収のためのコストは水銀輸出でカバーされており、輸出を禁止すると回収のためのコストが問題となる。
・輸出を禁止すると回収水銀の保管の必要が生じるが、日本には地震、台風などがあり、適切な永久保管場所を探すのが難しく、管理責任の問題もある。
・水銀安定化など技術上の問題もある。
・これらは水銀輸出禁止/制限を決定する前に議論されなくてはならない問題であり、2013 年の水銀条約採択までの残された2 年間で決めなくてはならないことは承知している。

上記に対する、化学物質問題市民研究会の見解です。
・水銀の回収については、汚染サイトの修復と同じく、リオ原則16 の汚染者負担原則や、拡大生産者責任が適用されるべきである。回収のためのコストは汚染者である非鉄金属精錬会社や水銀含有製品製造者が負担すべきである。
・回収水銀は当然、安全に長期保管されなくてはならないが、年間の余剰水銀発生量を100 トンとして、水銀の比重から逆算すると年間新たに発生する正味容量は7.38立米とわずかな量である。日本の全ての原発から発生する放射性廃棄物福島原発事故による放射性がれきの量と比べれば、無視できるくらい少なく、安全上のリスクも小さいと考えられる。水銀の安定化技術を含めて、水銀の長期保管は、国と汚染者が十分に克服できる課題である。
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上記の政府見解は私自身で出典を直接当たったものではないのですが、「回収水銀の保管の必要が生じるが、日本には地震、台風などがあり、適切な永久保管場所を探すのが難しく、管理責任の問題もある。」と本当に発言したのだとしたら、六カ所村にも地震・台風はあるはずだけど?と思ってしまいます。。。


(追伸)水銀の保管に関する環境省の発言は、2010年9月25日〜28日 神戸におけるUNEP のINC3_アジア太平洋地域会合でのNGOsと環境省との意見交換会での環境省の発言であり、当研究会の下記ウェブページに記録されています。
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC3_AP_Kobe/110925-27_INC3_AP_Kobe.html
このうち環境省の「日本の水銀輸出/保管について」が上記記事の内容に直接関係しています。この発言内容については、環境省の主張どおりの表現に修正すみとのことです。
をご覧ください。