汽水という環境

湖山池では塩分を高める操作を始めましたと、鳥取県の方からメールが届きました。湖山池は水門を設置して淡水にしていたのですが、ヒシとアオコに覆われるようになりました。それで汽水になればシジミが増えて植物プランクトンの異常増殖が収まると期待して、海水を入れるようにしたものです。今は赤潮が出ているそうです。
90年代の宍道湖だったら、赤潮がでてもシジミが食べてくれていました。でも湖山池は、報告書などを見ると懸濁物食二枚貝が住めそうにない底質の状態だったので、そのあたりをどう対処したのかが気になります。
環境省汽水湖ワーキングは、ようやく今年度の動きがでてきました。汽水域に形成される、複雑で豊かな生態系。どのような環境因子が変化すると(させると)、どのような生物にどんな影響が現れると考えられるのか、地元の方々に分かるように伝えることが、研究者に求められていると思います。このワーキングの成果は非専門家でも読める内容にして、一般に公開することを考えています。
私が学んだ東京大学地理学教室出身の吉村信吉先生は、陸水学会の設立に貢献し、海洋から陸水まで、あらゆる「水」に精通されていました。水草光合成速度を酸素の滴定によって日本で初めて分析したのも、植物学者ではなく、地理学者である吉村先生でした。
私は吉村信吉先生や西條八束先生ほど大きな存在ではありませんが、東京大学理学部地理学教室が目指した陸水学とは何なのかを、先生方が「湖沼学」や「湖沼調査法」などの名著で示されたように、国際誌論文だけでなく、日本語の書籍にして提示していきたいと考えています。