湖沼の定義

吉村信吉著「湖沼学」(1937)では、湖沼の定義として下記が書かれています。
周囲を陸地に囲まれた窪地にあり、海と直接連絡していない静止した水体のうち、
 湖:通常最大水深5m以上
 沼:最大水深5m未満
 池:小規模で人工的に作られたもの

しかし関東・東北地方では堰止め湖を「沼」と称することが多いです。例えば群馬県の菅沼は平均水深38m、最大水深75mです。同様に福島県の大平沼は平均水深13m、最大水深36mです。
一方、鳥取県では天然湖沼も「池」と呼び、かつ「湖」と呼ばれている水域よりも大きかったりします。例えば湖山池は7平方キロメートルあり、日本一大きい「池」で、芦ノ湖や山中湖などより大きいです。また東郷池(4.1平方キロメートル)も、お隣の島根県にある神西湖(1.35平方キロメートル)より大きいです。
このように吉村先生の定義通りに現実にはなっていないのですが、通称と最も異なるのは、上記の定義だと汽水湖沼は「湖」ではなくなってしまうことでしょう。代わりに「潟」と定義されてはいなかったものの、陸水だけでなく海洋にも通じていた吉村先生だからこそ、海と連絡している「潟」を「湖」と呼ばない方がよいとお考えになったのかもしれません。私は50歳を越えてようやくそう考えるようになったのですが(11月2日付記事参照)、吉村先生は湖沼学を著した30代で既に気づいていた可能性は十分あると思います。
歴史にIFはないのですが、もし吉村先生がもう少し長生きされていたら日本の陸水学はどうなっていただろうと思うことがよくあります。