訃報:Scot Nixon博士

前号のASLO BulletinにScot Nixon博士の追悼文が掲載されていました。5月に運転中に急逝したと書かれていたので、事故だったのだと思います。68歳でした。今年7月のASLOに来られていなかったので病気かしらと思っていたのですが、まさか亡くなっていたとは!あまりにショックが大きく、ようやく昨日、追悼文を書かれたKemp博士とHarris博士にお悔やみメールを出しました。
Nixon博士はOdum博士の弟子で、生態系を総合的かつシステマティックに把握する視点にとても惹かれていました。特に1988年にLimnology and Oceanographyに出された“Physical energy inputs and the comparative ecology of lake and marine ecosystems”は宍道湖の生態系を理解する鍵だと思い、関係者に読んでいただきたいとNixon博士に日本語に訳して配ってよいか問い合わせたところ、ご快諾いただきました。
1990年、INTECOLで日本に来られた時に宍道湖にも立ち寄られ、初めてお会いしました。「宍道湖の窒素循環は先生が提唱されているbenthic-pelagic couplingがドライビングフォースになっていると解釈して、その線でD論を書いているのですが、どう思われますか?」と尋ねたところ、「それは面白いと思う。是非検討を進めて下さい。そして学位をとったら、僕のところにポスドクにいらっしゃい。」との回答でした。幸か不幸か、学位をとってすぐ地質調査所に就職が決まってしまったのですが、もしポスドクに行っていたら人生全然違っていたと思います。
宍道湖の窒素循環、そして就職して始めたサンゴ礁の窒素循環の結果は、Nixon博士ならどう書くだろうと思いながら論文にまとめました。これらの研究から合計4本がLimnology and Oceanographyに掲載されたのは、その為だと思います(特にサンゴ礁では窒素固定が卓越すると世界で初めて指摘した論文は、即受理になりました)。
Nixon博士は、“Physical energy inputs and the comparative ecology of lake and marine ecosystems”を引用するときにはいつも、Translated into Japanese by Masumi Yamamuroと書かれていたようです。追悼文の引用文でもそう書かれていました。言葉になりませんでした。