環境ホルモン問題 〜ピコ通信最終号から

このブログでたびたびご紹介してきた化学物質問題市民研究会「ピコ通信」が、184号をもって終了になります。最終号から、同会が取り組んで来た問題の経緯・現状をご紹介します。今回は「環境ホルモン問題」です。
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当会発足の前年の1996 年、テオ・コルボーンさん等による『Our Stolen Future』がアメリカで発行され、世界中が衝撃を受けました。人間や野生生物が、微量の人工化学物質によってホルモンの働きをかく乱させられているという重大な問題提起でした。日本でも98 年に邦訳版『奪われし未来』が出版されると、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)問題への社会の関心が一挙に高まりました。
国も環境庁(当時)が98 年に「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」を発表、第1回国際シンポジウム(京都)を開き、2005年第8 回(沖縄)まで続きました。しかし、1998 年12 月『環境ホルモン空騒ぎ』(中西準子 横浜国立大学 新潮45 掲載)、2003 年3 月『ダイオキシン−神話の終焉』(渡辺正東京大学林俊郎目白大学)に代表される学者、評論家などによる環境ホルモン問題への社会や行政の高い関心・施策への非難を契機として、マスコミ報道は急速に減っていきます。そして、それに合わせて環境省は06 年のチビコト問題(後述)に象徴されるように、環境ホルモン問題は終わったという姿勢に転換してしまいました。
2005 年12 月の最後の国際シンポジウムで環境省は、”大騒ぎしたけれど環境ホルモンは結局、野生生物にしか害は及ばない”という様な"意見”が述べられた対談を掲載した小冊子『チビコト』を配布しました。チビコトの中では、「環境ホルモン問題というのは世の中が作った穴、研究対象であり、世の中が関心を失った瞬間に閉じてしまうという「井戸」だった」(対談:安井至−小出重幸)などと、とんでもない内容が語られています。当会では、公開質問状や環境省ホームページへの投稿などの行動を起こしました。
日本ではそのような状況ですが、EU や米国では環境ホルモン問題への学会や行政の取り組みに近年大きな前進が見られます。
(山室注:例えばWHO/UNEPは市民向けに環境ホルモン問題を整理した冊子を作成し、注意を呼びかけています。8月28日付記事をご覧ください)