「身を守る行動」に地学は不可欠

常総市を初めとする洪水被害では、降雨の最中からNHKなどで「身を守る行動を取ってください」とのアナウンスが流れていました。その後の報道番組では「予測はされていた」「住民にわかりやすいように伝えるべきだった」などのコメントが寄せられていました。
しかし災害は自分が住んでいる場所だけでなく職場でも、また通勤・通学途中でも起こりえます。さらには出張先、旅行先で起こるかもしれないのです。
そもそも地学の知識があれば、宿泊先を選ぶときに、裏が急勾配斜面になっているところは選ばないでしょうし、どうしてもそんな地形にしか宿がなければ、なるべく上の階を予約するでしょう。家を建てるときも、氾濫の危険がある場所や、液状化リスクがある場所、土砂災害リスクや断層近くなどに自宅を建てないでしょう(これらは現在や過去の地形図や地質図を見れば分かります)。
「身を守る行動」を取るには、自分が今いる場所にどのようなリスクがあり得るかを、車窓からも判断できる素養が不可欠です。行く先々からそれぞれの自治体の情報を事前に入手するなど現実的ではありませんし、海外出張に至っては、そういった情報が公的機関から提供されていないところもあります。
今回の災害のように、予測された被害がこれから現実になる地域は無数にあります。そして、今自分がいるところがそのような被害が起こりえることを自身が実感していないと、詳細な情報や避難場所を知る必要を感じないわけです。地震、洪水、地滑り、火山噴火など、日本にいる限り誰でも遭遇する可能性がある災害リスクにどう対処するかに、地学の基礎的知見は不可欠です。すべての国民が義務教育でそういった知見を身につけるよう、指導要領などを大幅に改訂すべきでしょう。

(追伸)
当然ながら、私はマイホームを建てるときに、古写真、地形図、地質図で購入予定地の状態を調べました。その結果、かつての河道ではありませんでしたが、地盤が多少軟弱であることがわかったので、基礎は通常よりしっかりいれていただきました。おかげで東日本大震災の際も、ほとんど被害はありませんでした。子供の頃、淀川の氾濫で何度か床下浸水を経験したので、小さな河川からでも十分離れている場所を選び、かつ、1mくらい盛り土してもらいました。