柴山元彦著「宮沢賢治の地学教室」

「それから逆サイクルホールというのもあるよ。これは高い所から、さっきの逆にまわって下りてくることなんだ。(略)冬は僕等は大抵シベリヤに行ってそれをやったり、そっちからこっちに走って来たりするんだ。」
上記は子供向けの天気図の解説書ではありません。宮沢賢治著「風の又三郎」の一節です。改めて、賢治の童話は地学の解説書だったんだと思いました。
本書はそんな観点から、高校「地学基礎」の内容を、宮沢賢治の作品と重ねて解説した、文系にもとっつきやすい参考書です。オールカラー、対話方式で解説されているので、中学生でも理解できるかもしれません。とても読みやすい装丁になっています。中身は下記リンクから立ち読みできるので、是非ご覧になってください。
https://www.sogensha.co.jp/tachiyomi/3824

著者自身の「はじめに」以上に、本書をよく紹介した文章は私には書けそうにないので、下記にペーストしました。
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 日本は国土が狭いにもかかわらず、多様な白然現象がみられる国です。
何時間も列車に乗っても景色に変化がない国とは違って山あり谷あり、
さらに海などもありますし、北と南で異なる気候や四季の変化が、景色に
彩りをそえ、美しい最観を各地で見せてくれます。しかしその一方で、災害をともなう厳しい自然現象に直面しなければならないことも事実です.
 この多様な自然現象の中で生きていくには、自然に対する畏敬の念とと
もにその白然を理解するための知識が必要です。それを学ぶ教科が地学です。現在、高等学校では理科に「地学基礎」と呼ばれる科目があり、全国の高校生のおおむね3分の1が学んでいます。宇宙から気象を含む地球表面の地形や地質、さらにはその内部まで幅広いテーマを扱っていて、化学、物理、生物の要素がすべて関わるスケールの大きな内容なので、理科が苦手な人にはとっつきにくいかもしれません。しかしそれらは、実は私たちの身近に起きている現象なのです。特に、地震ゲリラ豪雨、火山活動などによる自然災害が頻発する近年は、それらの基礎知識を学べる地学の重要性は高まっていると思われます。
 より多くの人たちに地学を知ってもらい、また今学んでいる人や学び直したいと思っている人には、さらに興味をもって継続してもらえる方法はないかと考えた結果、宮沢賢治の作品を引用することを思いつきました。賢治は文学者として有名ですが、地学の先生でもありました。そのため、作品の中には地学的なテーマや表現がふんだんに盛り込まれているのです。
 本書は、賢治の地学的な作品を引用しながら、「地学基礎」を学べるように試みた参考書です。一見難しいと思われる科学的な内容も、有名な文学作品にみごとに活かされていると知れば親しみが湧くと思います。また、地学を学んだ後に賢治の作品を読み返してみると、新たな発見があり、より一層作品の理解が深まることでしょう。
 この本を通して、地学が不得意だと思っているあなたにも、ぜひ地学を好きになっていただけると嬉しいです。