私は日頃から「地学は高校まで全員が必修、小学校でも地学の知見を踏まえた防災教育が必要」と考えています。そのような観点から、リスク対策.com52号の「鬼怒川決壊への対応を検証」という特集を検討してみました。
記事では被害を拡大させた常総市のミスとして、
・常総市はハザードマップの浸水域に市役所を建設し、さらに非常用自家発電装置を地上に設置していたために水没、電力が途絶えた。
・気象庁から発せられる大雨特別警報への対応も遅れ、避難者は迅速に必要な行動を取ることができなかった。さらには鬼怒川東側の住民に対して、堤防が決壊した河川側(西側)に避難誘導した。
・常総市は市役所本庁だけではなく、本庁が使用できない場合の代替候補である常総市役所石下支所、常総市生涯学習センター、常総市水海道保健センターの3拠点全てがハザードマップの浸水予想範囲に入っており、実際、今回の洪水でも浸水被害にあった。
などを指摘していました。
これに関連して、「常総市には防災や危機管理の専門知識を持つ防災専門監がいない。それならばなおさらのこと、平時からの国や県との連携が必要になる。」と書かれていました。しかし、国も自治体も担当者が2,3年で交代する現状で、連携は本当に有効なのでしょうか?
また特集では「災害基本法は3.11を受けて改正され、市区町村長から助言を求められた場合に、国や都道府県にはこれに答える応答義務が課せられた。」と記していました。しかし国のどこがどのようなことを担当しているのか、疑問に思いました。例えば防災研のホームページを見ましたが、一般の方は自治体の方が問い合わせる窓口は見当たりませんでした。あるのかもしれませんが、とてもわかりにくいです。また国はともかく、県に市町村に助言できる専門家がいるのでしょうか?
特集では、常総市の間違った避難誘導を例に「行政はミスを犯すものと考えた方が合理的な場合もある。自分や家族の命を守るために何が必要かは、住民ひとりひとりが判断しなくてはならない問題。」と説いていました。しかし市役所を、自身が出した防災マップで洪水リスクが高いところに建ててしまうほど、日本人は総じて地学リスクに疎いものです。自分の命を守れと言われて、守れるものではないと思います。
やはりまず、国民全員がハザードマップや活断層図などを読みこなせる教育を義務教育で充実させることが第一でしょう。