EM菌に反対するより前にやるべきことがある

小中学校でのEM使用について、「その効果の有無をめぐる問題とは別に、EMの原理をめぐる非科学的主張に教育現場が一種の『お墨付き』を与えている。児童・生徒の科学リテラシー育成に重大な悪影響を与える可能性が危惧される。」として反対を呼び掛ける署名サイトがありました。
下記をクリックするとそのサイトにつながります。
小中学校におけるEMの利用を止めてほしい
反対する理由として5項目が解説されていました。そのうちのひとつが下記です。長文ですが、著者の意図が伝わるようにそのままコピペしました。
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(2)環境浄化への取り組みを誤解させた上、むしろ環境を悪くする可能性がある
 河川や湖、海などで、「ヘドロが多い」「匂いがある」等の有機汚濁が問題になっている場所で水質を浄化するためには、
a)有機物の負荷を減らすこと、
b) 窒素やリンの負荷を減らすこと、
c)浄化機能を担う生物の生息場所である浅い 水域を増やすこと、
d)有機物を水域から取り除くこと、
e)水底まで酸素を行き渡らせること、
などが有効です。
 EMを投入するだけで環境浄化に役立つと教えることは、これらa)〜e)に示したまっとうな環境浄化の方法を学ぶ機会を失わせることになります。
 EMは微生物ですからそれ自体が有機物です。河川・湖・海に投入すればかえって水域への有機物負荷を増大させることになり、水質を悪化させる可能性があります。
 また、水中の有機物を分解する微生物は自然の中に多数いますので、そこにEMを追加しても、EMが狙った通りに増えるとは限りません。もし、狙った通り増えたとしたら外来の菌により元々の菌の組成を変えてしまうことになり、外来生物の導入という面からも望ましくありません。
 EMは「有用微生物群」であるとされ、複数の微生物の混合物と推定されます。しかし、製品としてどんな菌がどういう割合で入っているかは明らかにされていません。
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ところで私は小中学校の教科書をいろいろ調べましたが、EM菌を教科書で勧めているものは見つかりませんでした。一方で中学校理科の教科書には下記の記載がありました。



上記EMの問題点として署名呼び掛け人が指摘していることがそのまま、アサザやヨシによる水質浄化と一致することが分かります。
EMが学校教育に広まってしまったのは、そもそもこのような教科書を作った科学者、それを検定して通してしまった科学者などからして、科学リテラシーが欠如しているからではないでしょうか。
私が特に問題だと思うのは、ヨシについては有機物を増やすので水質浄化にならないという指摘が以前からあったのに対し、アサザについては、学校教育でアサザ植栽が全国的に広まってしまったのに、水質浄化効果どころか酸欠を招くという極々当然のことを、生態学者の誰も指摘しなかったことです。アサザに水質浄化機能があると最初に印刷物で唱えたのは、日本の著名な生態学者だったにもかかわらず、です(海外ではアサザは侵略的外来種として駆除の対象です)。
EM菌は教科書で推奨されるほど義務教育に浸透していませんが、生態学関係者が批判しているのをよく目にします。一方で義務教育の教科書でこのような非科学的な記載があり、かつアサザを植えれば自然が回復すると主張したり、霞ヶ浦でのアサザ植栽事業を批判するどころか推奨しているのは、科学的に公正な態度とは言えないと思います。EM批判の前に、まずは生態学関係者が猛省すべきではないでしょうか。