東京は世界一危険な都市なのに

都知事選ではそれなりに防災に関する見解が聞かれますが、海外の保険会社のランキングで世界一自然災害リスクの高い都市とされている割には、切迫感が感じられません。
東京がいかに危険か知っていると、例えば本郷の講義で地上3階にあるTXから千代田線に乗り換え根津まで向かう間、「頼むから今だけは地震が起こらないで。。。」と思ってしまいます。特に今学期は木曜1限のほとんどが雨だったのでなおさらです。
ゼロメートル地帯の堤防は一部老朽化しており、また厚さ30cm程度のところもあるそうです。その上に地震液状化して脆弱になったところへ大雨や高潮が発生したら、決壊の可能性が十分あります。その水が地下鉄に流れ込んだらどうなるか?
東京メトロでは「浸水のおそれがある時、止水設備閉鎖のため、一般利用者の外への避難誘導が課題(避難場所が遠いなど)」としています(リスク対策.com, vol.52, p36)。つまりうまく地上に出れたとしても、そこから安全な所に避難できる仕組みが確立していないのです。
この号のリスク対策.comのあとがき(p111)で編集長がこう書いていました。
「オリンピックまであと5年を切った。それまでにあと何回、大規模な災害や事故が起きるのかは想像もつかないが、関係者全員が『最善の対応ができた』と言える事案に変えていけるよう、努力していかなくてはならない。」
ここで問題なのは、どういうリスクがあるかを知らないで最善を尽くしても、それは最善の対応ではないということです。福島原発事故では、産総研の研究者が過去の津波堆積物などのエビデンスから、3.11のような地震が起こったらどれくらいの津波が来るか委員会で何度も説明していたのに、「異論がある」と無視されました。もっと低い想定をしていたのは、地学の研究者ではありません。一般に地学と土木は同じと思っている人が多いですが、全く別の学問です。例えば、土木は現在、あるいは極めて短いタイムスパンで起こったことしか視野にない傾向があります。ですので、地学で指摘したことを「異論があるから」と無視してはいけなかったのです。
そういった観点から、東京はまずは地学リスクの棚卸しから始めるべきです。その上で何が起こりえるのか想定して、最善の対応とは何かを検討すべきでしょう。