1月27日発売の「週刊金曜日」に「『学問の府』広島大学で現在進行中の『大人のいじめ』前編 業績水増しを告発した准教授を『クビ』へ」と題した記事が掲載されていました。
記事によると不正を告発した准教授は、新たに赴任した教授に理由もなく研究妨害をされ、かつ、その教授がP1・P2実験室で飲食を行ったり扉を開放したままにしたりと専門性を疑わせることをやめないことから不信に思って業績を調べ、水増しに気づいたそうです。ヒ素・水銀の廃液を「薄めればよい」と学生に流しに捨てさせた疑惑がある、東京大学自然環境学専攻の某教員のケースと同様、常識以前の問題です。
そして告発を行った准教授は、業績評価を「C評価」にされて再任不可になったそうです。C評価の理由は「研究をしていないから」。その教授によって研究を妨害されたのに「研究をしていない」という理由でC評価にしたところも、私とそっくりです。私の場合も、専攻が私に講義や学生指導をさせなかったのに、その専攻自身が私の教育活動をC評価と報告してました。
さらにそっくりなのが、広島大学がその教授による業績水増しも実験室での飲食も不問に付し、それはおかしいと准教授が広島大学の公益通報窓口に異議を申し立てたところ、受け付けてもらえなかったそうです。私や、指導教員を私から無理矢理他の教員に変更させられた私の学生達が東大のコンプライアンス相談窓口に訴えても、「それは専攻の権限です」と門前払いにしたのと全く同じです。
しかし、仮にも学問の府である大学がこんなことをしているから、日本のトップと目される東大でも世界はおろか、アジアでさえ4位(2016年)に甘んじることになってしまうのでしょう。
特に東大は2010年以降、まるで堰を切ったがごとく、学問の府にはあるまじき不祥事が続出しています(10月14日付ブログ参照)。その記事で冒頭に紹介した告発通りの不正が行われていたのだとしたら、世界からの信用失墜は免れないと思います。そこまでなぜ放置されたのか。
ひとつには、私や広島大学の例のように、社会通念からあまりにも外れていたので、組織として面子がつぶれるのを防ぎたいと思ってしまったという面があるでしょう。しかし正す方ではなく隠蔽する方に走ってしまった背景には、正しいことを正しいと言わせない、それでも言ったら徹底的に潰そうとする残念な風土が、日本の大学に蔓延しているからだと思います。
私達の税金がこの国の学問の健全な進展につながるためには、近年の東大に見られるような不祥事を、徹底的に断つ必要があります。そのために最も有効なのが内部告発であることは、論を待たないでしょう。専門性の高い内容ほど、内部の人間しか不正に気づきにくいからです。そのためには第三者機関(文科省からも独立して)として、全ての国立大学を所掌する通報窓口を作ることだと思います。イメージとしては公正取引委員会みたく、内閣府の外局として位置づけるのがよいと思います。
これ以上日本の名だたる大学で呆れかえるような不祥事が続発して信頼が失墜する前に、早急な対応が求められていると思います。