告発の行方

2016年8月14日、Ordinary researchersの匿名で東大医学部の教授達の研究不正が東大だけでなくマスコミ、厚労省文科省内閣府などに告発されました。この問題はScience誌が報じたことにより、世界の科学界からも注目されることになりました(Science誌が報道した記事へのリンクはこちら)。
当然ながら日本のサイエンスライターSTAP細胞事件のゴタゴタを踏まえ東大がどのように対処するのか注目し、2017年春には結果が出ることになると考えていました(例えばYahooニュース記事)。

ところが明日で告発から9ヶ月になるというのに、東大は未だ検討結果を公開していません。著名な教授達による、巨額の税金を使った成果も含む多くの論文が不正であるとされ、かつ彼らの不正が常習的であるだけでなく「あまりに杜撰なつくりである」とまで書かれていることから、どう発表すればよいか分からず頭を抱えているのかもしれません。東大医学部とはそんな杜撰な不正さえ匿名で告発されるまで放置されるようなところだったと、認めることになるのですから。

この告発については2016年10月14日付記事でとりあげ、告発文へのリンクも貼りましたので、関心のある方はどうぞ原文をお読みください。

上記記事で書いたように、最近の東大で頻発している不正は私の例も含め、あまりにおそまつ、かつ杜撰としか言えないものです。Ordinary researchers氏の告発文にも「どうしてこんな馬鹿げたことが東京大学ともあろうところで常習的になっているのだ!」という怒りがあふれているように私には読み取れます。東京大学にはそういった、当たり前のことを指摘することで迫害される実態があり、だからこそ学内のコンプライアンス制度ではなく匿名で学内外に告発することで私のように組織ぐるみの迫害を受けることもなく問題が解決したら、東京大学の現在のコンプライアンス制度は瓦解することになるでしょう。

実際、現在の東京大学コンプライアンス制度は様々な意味で不十分だと実体験から思います。そのことが証明されるという意味でも、Ordinary researchers氏の告発の行方に注目しています。さらには言えば、コンプライアンス制度が機能していないのは他の大学について耳にする例からも、日本のほぼ全ての大学に共通するのではないかと考えています。

今回指摘されたことが事実であったなら、これをきっかけに、日本の大学におけるコンプライアンス制度の在り方に社会の関心が向くことを期待したいと思います。