9月7日記事でご紹介したNHKスペシャル「MEGACRISIS 異常気象・スーパー台風 予測不能の恐怖」では、東京へのスーパー台風の上陸が、24時間前に予測できなかったらどのような惨事になるかをドラマ化していました。理学部で開講している水圏環境学ではこの危険性を2015年度(1月にGeophysical Research Letters, 42, 646-652を読んでこれは大変!と思って)から、学生さん達に示してきました。特に高潮の危険については、防潮堤の一部は幅30cmほどしかなく、1カ所でも切れたらその時の潮位の高さまで等しく水害に遭う(=切れたところから離れているから安全というわけではない)と説明してきました。
しかし海外での被害写真を見せても、それが自分たちが住んでいる、もしくはたまたま通りかかるかもしれない地域で起こり得ると想像することは難しいようでした。今日のドラマはスカイツリーが映っていたり等とてもリアルだったので、イマジネーションを十分刺激しそうです。来年度の講義で見せられるように、再放送は必ず録画しなくてはと思いました。
それにしても、地震・津波は3.11で「過去に起こったクラスの災害は必ずまた起こる」ことがある程度認識されたと思いますし、温暖化による気象の変化も度重なる「50年に一度の豪雨」で肌身に感じているとは思いますが、過去にATやAh火山灰を降らせたような噴火が今起こったら日本は滅亡するかもしれないことを、いったいどれくらいの日本人が認識しているのでしょうか。
地震も津波もスーパー台風も甚大な被害をもたらしますが、火山の巨大噴火は被害地域の範囲が桁違いです。一方で、地震と違って、どこが破局噴火するかは、ある程度限定できるはずです。いつ噴火するかの予知は難しいと思いますが、巨大噴火が起こる可能性がある地域がある程度限定できるのであれば、Geoengineeringで破局的噴火を防ぐことはできないでしょうか。例えば噴火するということはマグマが貯まっているはずですから、それを人工的に、破局噴火になる前に小出しにすることはできないでしょうか。小出しにすれば地熱利用などにも使える可能性もでてきます。
残念ながら今の政府は火山銀座の九州で原発を再稼働することを後押ししているわけですから、破局噴火への対策は全く考えていないと思われます。私は地学関係の知り合いが多いのですが、巨大噴火を封じ込める技術開発の話題を聞いたこともありません。そういった技術開発は、火山噴火リスクが最大である日本人しか取り組む動機もないことですから、国策として取り組むべきだと思うのですが。