土砂バイパスでアユを取り戻そう

「アユ 土砂移動」でググルと、ダムや堰堤などによって土砂供給や土砂の移動がなくなったことがアユ激減につながっていることがわかります。魚道を作っても、そもそも住める場所がなければ、登ってくれるわけがありません。
一方で、ダムが埋まってしまうほど土砂生産が大きいところでは、堆砂バイパストンネルという仕組みが既にできていて、ダムをスルーして下流に土砂が流れています。例えば「旭ダム 土砂バイパス」で検索すると、いろいろ記事が出てきます。
ところが、少なくとも目に付くところには、それにより漁獲対象魚種の資源管理にどのような効果があるのか記載されたものが見当たりません。おそらく、10月6日の記事「川や湖から食べられる魚が消える」で紹介したように、国交省による多自然型川つくりには私たちが食べる魚を増やす場所という観点が無いために、土木サイドからそのような研究が為されていないのだと思われます。
日頃から本当に不思議なのですが、たとえば里山や水田が生物多様性を育んできたということを生態学者が言うことがあっても、湖沼や川でも水草を徹底的に刈り取ることで多様性を育んできたとの認識は皆無です。
この点について、私の水関係の講義ではNHKスペシャル「映像詩 里山 命めぐる水辺」を見せています。イタセンバラ、スナヤツメといった超レアな魚が普通の町中の水路に暮らせている理由は、希少種のバイカモも含め、水草を徹底的に刈り取っているからです。刈り取っても翌年にはちゃんと生えてくるのが水草という雑草です。それを刈り取るからこそどぶ川にならず、鯉や鮒とまざって超レアな魚も暮らせるのです。
今、土砂供給が減ってしまった川でやらねばならないことは、除草剤が広まる前に日本人が徹底的に水草を刈っていたように、水草が生えないような管理をすることです。そのひとつが土砂バイパスのような仕組みであり、水草の根こそぎ除去ではないでしょうか。