5年後の宍道湖漁業は?

日本の川や湖沼はつい戦前まで、水草が洪水や台風による波浪などで一掃される自然環境にありました。湖では加えて、水草を徹底的に刈り取って肥料にしていました。
もし水草を刈り取らなかったらどうなるか。
下の写真は東シベリアの最大水深1mの湖沼です。基盤はもともと砂でしたが、気候変動によって水がたまるようになり、水草が侵入しました。しばらくは水位は高まる一方で、とうとう維管束植物の水草が生えれないくらい深くなり、低照度でも繁茂できるシャジクモが優占するようになりました。その後はシャジクモと維管束植物のイバラモが優占しています。注目すべきは、水草を刈り取らないとこれらの植物の枯死体がつもって、どんどん浅くなったことです。そして水草により作られた堆積物は、完全にヘドロです。これではシジミは住めません。

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今の宍道湖は放水路ができたので、斐伊川の洪水の影響が激減しています。そして、汽水なので種類数が少なかったはずの水草も、雑種が次々侵入して、今では少なくとも5種類が繁茂しています。種類が違うと異なるニッチェを利用すると考えられますので、多種の水草によって一面水草でおおわれた琵琶湖南湖のようになるはずです。その南湖ではシジミ漁はおろか、魚を捕る漁業も壊滅状態になっています。
私はそうならないように、水草は有効利用ではなく、初期成長段階での全刈り取りを提案してきました。またシジミ漁が不振になったときのために、長期的に取り組むべき事も関係者に伝えて来ました。しかし誰も何もしようとしないのが、さすが保守の牙城・島根県です。
私の予測では、今年度に対策プロジェクトの準備をして予算を確保し、来年度から5年程度を目処に実際に対策を行うための研究を始めなければ、5年後には宍道湖の漁業は琵琶湖南湖と同様になります。
昨年までは、この状況は日本の汽水湖全般に当てはまると考え、水産庁などに内水面水産研究所を作るべきと考えていました。しかし最近、ある点において、宍道湖だけが日本でも特殊な状況にあることが分かりました。だから他の汽水湖には起こっていない水草問題が起こっているのです。ですので島根県、もしくは周辺市町村や漁業従事者が、まず動かねばなりません。
かつて宍道湖のシジミ漁獲量が急減したとき、私は原因も対策もおよそ分かっていたので、5年で何とかなると確信して宍道湖再生協議会の座長を引き受けました。同時に申請した河川生態研究予算のヒアリングでも、座長の川那部先生に「シジミに関する異変は5年で何とかします。継続はしません。」と啖呵を切ったので、水草問題などは残りましたが、継続申請はしませんでした。
これから5年後に来る危機は、来年度から動き出してギリギリ間に合うかという危機です。そして前回の場合は塩分が原因でしたから高くなれば比較的速やかに回復しますが、今回の危機は堆積物が絡んでくるので、一度悪化したら回復はまず無理です。ですので、今年度中に関係者から対策指揮の要請、及び示した対策を必ず実行することを約束するのであれば引き受けますが、来年度以降ではもう手遅れなので、引き受けません。
さて、関係者はどう動くのでしょう。