水質データの経年比較の落とし穴

今日は5年間やってきた宍道湖プロジェクトの最終報告書をまとめています。
プロジェクトの主役はお味噌汁の具になるシジミで、宍道湖では1972年以降、年間1万トン以上漁獲されるようになりました。その頃の水質が分かればいいのですが、島根県の水質分析を担当している知人からは、1984年以降しかないと言われていました。
ふと思いついて国立環境研究所のデータベースを検索すると、1972年までCODのデータがさかのぼれました。ただし、こんなこと絶対あり得ない「2mg/L」、1980年代の半分以下です。知人になぜなのか理由を聞いたところ、この頃は現在のような酸分解ではなく、アルカリ分解だったからとのことでした。
分析方法が同じでも装置による誤差があるくらいですから、分析方法が変わると値が変わるのは当たり前のことで、COD以外でも、例えば「全窒素」と書かれていても現在のように燃焼して測っているのか、ケルダール分解で測っているかで、値が全く異なります。過去から現在の値を比較するときには方法が同じかなど、かなり注意する必要があります。
そういうことに疎い人がこのデータベースの値を鵜呑みしては誤解を招くので、知人に、「アルカリ分解の時のデータはデータベースから削除するよう、国環研に伝えた方がいいですよ。」とお勧めしました。