体制側の見解に反論するのは命がけ

ロシアでは体制側の見解に反する主張をすると消させることが珍しくないそうです。バイカル湖で底生緑藻が異常繁茂したり共生海綿が大量死したりする異変について、体制側は地球温暖化が原因としていました。それであれば、世界遺産であるバイカル湖の自然を劣化させた原因が、ロシアだけではないからです。しかし私の共同研究者は富栄養化、特にリンが原因と主張していました。彼はロシアではマイナーなクリスチャン、それもかなり熱烈なタイプで、正しいことをすれば神が守ってくれると心から信じているようです。おかげで彼の研究室は十分な予算が取れず、食品用の瓶を再利用してサンプルの保存に使っていました。
そんな中で始めた共同研究で、私は下水処理水や間隙水の栄養塩濃度を調べるべきだと主張し、自分でもパックテストを持ち込み、確かにリンが高濃度にあることを地域の環境担当者や同行したテレビクルーにも分かるように示しました。この様子はロシアのテレビで放送され、今も下記URLで見ることができます。黄色のレインコートに花柄のバッグを持っているのが私です。
http://lavrstudio.com/en/films/documentaries/item/o-bajkale-nachistotu.html
ロシア駐在が長かった文科三類時代の同級生からは「体制に反対するのはやめた方がいいよ」と忠告されてましたが、さすがに外国人の科学者を消すことはないだろうと高を括っていました。幸いその通りでした。来月のバイカル湖近くで開催される国際会議でも、同様の趣旨で報告する予定です。
日本もつい70年前までは、体制の都合に合わない主張をすると消されていたわけです。今も皆無ではないのかもしれませんが、少なくともネットなどに体制批判が溢れている状況は、喜ばしいことなのだと思います。