アメリカだって緩い

「Neonicotinoid contamination of global surface waters and associated risk to aquatic invertebrates: A review」とのタイトルの2015年に公表された論文は、動物によってネオニコチノイド系殺虫剤(以下、ネオニコ)の影響がかなり異なることや、アメリカやEUの水圏でのネオニコ濃度、その規制状況などをざっと見るのに便利な論文です。

https://doi.org/10.1016/j.envint.2014.10.024

フリーではないのが難ですが、ダウンロードできる方は是非Fig.1aをご覧になってください。アメリカ環境保護局(2014)の報告から、アメリカの淡水環境でのネオニコ濃度の「平均値」が1μg/Lと示されています。初めてこれを見たときには何かの間違いではないかと思いましたが、同論文のTable 3に、水圏生態系を保全する上でのイミダクロプリド濃度の目安としてアメリカ環境保護局が出している数値として、平均1.05μg/L、最大35μg/Lとあります。つまりアメリカでは平均で1μg/Lも出てしまうので、こういった規制にせざるを得ないのでしょう。日本の「水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準」でイミダクロプリドは1.9μg/Lなので、最大35μg/Lとしているアメリカ規制は、かなり緩いと思います。
なお上記論文では全てのネオニコについて最大0.2μg/Lが、生態系を保全する上での濃度としています。
かつては田んぼの水路にウジャウジャいたアメリカザリガニが、いつのまにかほとんど見られなくなりました。もしやネオニコが原因ではと霞ヶ浦近くの稲刈り前の田んぼに行きました。米が実る頃にカメムシ対策でネオニコをまくからです。用水路の水からジノテフランというネオニコが約3μg/L検出されました。さすがのザリガニも、この濃度はヤバイのではないでしょうか。
因みにジノテフランの「水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準」は12μg/Lです。