秋田県でのクマ被害増加原因

11月2日のNHK「日曜討論」で「クマ被害多発 影響は 対策は」と題して森林総合研究所 東北支所の大西尚樹氏、兵庫県立大学の横山真弓氏、NPO信州ツキノワグマ研究会の岸元良輔氏が議論していました。
横山氏は、クマの個体数増加により市街地にまでクマがあふれている状況、中山間地域の人口減少により、柿などの餌になる果樹が放置され、クマの餌が増えているという趣旨の発言をし、駆除の重要性を強調していました。クマが増えているとの主張は下記にもありました。

岸元氏は、「駆除は現実的ではない、クマがヒトの生活圏に入らない工夫が必要。」と訴えていました。番組とほぼ同じ主張が下記で掲載されていました。

番組では秋田県の鈴木知事もオンライン参加し、「果樹の伐採に関する規制の緩和」を訴えていました。上記、横山氏の主張に沿った要望です。

2年前の2023年(令和5年)も過去にないクマ被害が発生し、対策が検討されていました。

上記リンクの「参考資料2」の1頁に下図がありました。被害が多発している秋田県では、クマが増加しているとの上向き矢印は着いていませんでした。

また7頁には東北地方のクマによる人身被害の発生状況の推移図がありました。令和5年に一気に被害が増えており、それまではほぼ同じ水準で推移していました。

番組で原因とされていた「中山間地域での人口減少」や「里山維持機能の低下(放置果樹も含む)」、それによるクマの個体数増加であれば、令和5年になるまで被害数が増加していない状況を説明できないと思います。

横山氏の業績をResearchmapで見た限りでは、ツキノワグマに関連する現地調査は兵庫県に限られているようでした。近畿地方のクマ被害は東北地方とは全く別物で、兵庫県での調査結果だけからだと、東北地方固有の環境要因を見落とす可能性がゼロではないかもしれません。

有効な防止対策は多方面から検討された、科学的に正しい原因(コレかアレかではなく、複数の要因の時間差による影響もあり得ます)を踏まえて行わなければ、効果は薄いと思われます(根拠抜きでツキノワグマを片端から駆除すれば、人的被害の防止にはなるかもしれませんが)。