バイオサーファクタントとしてのバイオフレンズ考

入試説明会での研究室説明で、「環境問題はつまるところ、人がどう生きるかが大切だと思う。例えば私は水環境を守りたいから、シャンプーではなく、納豆とヨーグルトとイーストを米(もちろん無農薬!)のとぎ汁と砂糖で培養したバイオサーファクタントを使っているし、お掃除だってそれでしちゃう。」と説明したら、目が点になってました。バイオサーファクタントという言葉が難しかったかもと思って、「最近、お酢重曹でらくらく掃除、なんて生活雑誌に多いけど、あれみたいなもん。乳酸菌のおかげで酸になってるから。でもエネルギーかけて工場で作った酢で掃除するより、そのまま流したらCODを高めるものを有効利用する方がいいでしょう?」
ということで、下記は松崎早苗さん考案、私たち主婦仲間が「バイオフレンズ」と呼んでいるバイオサーファクタントについて、ある学会の要旨で説明した文章です。化学物質過敏症の方にはおすすめかも。
因みに私は40代半ばですが、白髪も抜け毛もほとんど無いばかりか、長髪なのに枝毛もありません(しっかりドライアーかけていても)。バイオフレンズを使う前は少なくとも枝毛はあったので、合成界面活性剤は、実は環境だけではなく髪自身も傷めてる可能性があるんじゃないかと思ってます。

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バイオサーファクタントは英語のbiosurfactantをそのままカタカナにした言葉で、和訳は「生物界面活性物質」である。他の界面活性物質と同様、1分子内に水に溶けやすい部分と水に溶けにくい部分を持つ。広義には広く生物全般について、内外に生産する界面活性機能を持つ物質全般を指すが、慣例的には微生物の菌体外産生界面活性物質を指す。微生物以外のバイオサーファクタントとしては、高等動植物による胆汁酸、レシチンサポニンなどがある。
バイオフレンズは、三温糖を米のとぎ汁等の炭水化物が混ざった溶液に溶かしたものを培養液として細菌と酵母を増殖し、その培養液ごと洗浄剤として使用する。従ってその洗浄作用にはバクテリア酵母そのものの代謝酵素などが関与する生化学反応)と、バクテリア酵母が培養液に排出した物質、もしくは排出した物質が培養液と化学反応を起こして生成した物質などによるものと、複数の機構が関与していると考えられ、広義の意味でのバイオサーファクタントを利用していると言える。
微生物バイオサーファクタントは石油の三次回収技術分野、タールサンド・オイルシェールからのアスファルト油分回収技術分野、タンカーの貯油槽、石油燃料タンクや石油環境汚染などの洗浄・除去技術分野、機能性界面活性剤分野、炭化水素発酵や炭化水素排液処理技術分野、鉱石の浮遊選鉱技術分野、および血栓溶解剤等の医療分野など、多岐に渡る分野で応用面の研究が進められてきた。これまでに発見された微生物バイオサーファクタントは、親水基の構造から糖脂質系、リン脂質系、アミノ酸系、高分子系、粒子系の5つのタイプに分類できる(Garti 1999)。また主なバイオサーファクタントの構造と機能については、Siegmund (2002)に構造図付きでまとめられている。
最近になって開発された応用例としてはsophorolipidによる赤潮などの有害藻類の除去作用(Sun et al. 2004)がある
いずれの研究もバイオサーファクタントと目される物質を抽出したり、その生産微生物を特定することが重視されており、そのことが微生物群集の集合体として可能になる効果を看過してきた可能性がある。バイオフレンズのように未特定の複数の微生物による内部・外部生産物の効果を全体として評価・利用する試みは、今後も新たな発見をもたらすのかもしれない。

文献
Garti, N. (1999) What can nature offer from an emulsifier point of view: trends and progress? Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, 152, 125-146
Siegmund, L. (2002) Biological amphiphiles (microbial biosurfactants). Current Opinion in Colloid & Interface Science, 7, 12-20
Sun, X., Choi, J., and Kim, E. (2004) A preliminary study on the mechanism of harmful algal bloom mitigation by use of sophorolipid treatment. Journal of Experimental Marine Biology and Ecology, 304, 35-49