琵琶湖の深呼吸が止まる

昨日の「筑紫哲也ニュー23」で、琵琶湖湖底部での貧酸素化が特集されました。
このテーマは滋賀県琵琶湖環境科学研究センター の熊谷道夫研究員が永年取り組んでいます。目に見えない湖底での、目に見えない酸素濃度の低下。今回の特集では、それが琵琶湖周辺の温暖化を加速し、紅葉が遅れているのだと、まばらな紅葉を映すことで視覚に訴えていました。

残念なことに、人間は視覚に多くを頼り、物事を判断します。なので、水環境の専門家に見えること−水の中の物質の濃度とか水面下の生物の在り方とかが、一般市民だけでなく生態学の専門家であっても、陸上を対象にされている方には理解されていません。例えば霞ヶ浦では、絶滅危惧種アサザを植えたら水質がよくなるという妄想が広まり、そのために湖の内側に防波堤を作るという、とんでもない環境破壊が進んでいます(アサザ植栽と防波堤のおかげで、霞ヶ浦から出ていく温室効果ガスの量が増えた可能性があることは、水環境専門の学会誌で発表しました。今のところなんら反論はありません)。

熊谷さんは、そんな「大衆心理」に早くから気づいていて、目に見える映像で琵琶湖の湖底で起こっていることを伝えることが大切と、「淡探(たんたん)」と名付けた潜水艇を開発しました。水深100mもの琵琶湖の湖底を自由に泳ぎ回って撮ってくる「淡探」の映像は、琵琶湖で何が起こっているのか、専門知識がなくても方向的に正しい理解に近づけるものだと思います。

その「淡探」が嘉田知事のもと、財政難から廃船の危機に陥っているそうです。嘉田知事はもともとは、熊谷さんと同じ研究所の研究者でした。その彼女がこうせざるを得ないほど、滋賀県を財政難に陥れている元凶は何なのでしょう?

琵琶湖は、日本の陸水学における重要なフィールドです。そして、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター の前身だった「滋賀県琵琶湖研究所」は、県立の研究所でありながら、日本の陸水学の頂点を走る研究を輩出してきたところです。その伝統が、たかが「お金」(もちろんそれは大切です。でも、お金は大切なことのために使うものであるはずです)のために、消されようとしています。

今回の特集は、そんな危機を感じたジャーナリストの努力の結晶だと思いました。

#熊谷さんからのお願いです。特集にも登場した「淡探」存続要請を、支援メールやお手紙で嘉田知事にお送りください。
ab0001@pref.shiga.lg.jp
大津市京町4丁目1−1