地方の時代、多様性の時代

先週末(12月8,9日)は松江に出張していたのですが、紅葉がまだ見頃でびっくり。寒くなると海に帰るスズキも、まだ宍道湖をウロウロしていると聞きました。やっぱり地球は温暖化しているのでしょうか。
ところで、気候などが変化しなくても、生態系は一定の状態であり続けるとは限りません。里山が人間にとって都合がよい状態であり続けたのは、そうなるように人が管理していたからです。鎖国していた江戸時代は、3000万もの人口を国内にある資源だけで養ってきたわけですが、それを可能にしたのは、人間にとって都合のよい状態を維持するノーハウの蓄積です。それが里山・里湖(さとうみ)システムだったと考えています。
水環境についてみると、河川法では「治水・利水・環境」が管理の重点なのですが、かつてはこの「環境」の部分を、人々がサステナブルな生活をすることで維持していたわけです。
ところが現在ではこの部分も河川管理者が考えなくてはならない。かつ地球はもしかして温暖化していて、たとえ江戸時代と同じ人口・方法でもそれがサステナブルでなくなる可能性もでてくるわけで、国土交通省の方々には大変な時代だと思います。
ここで私が期待しているのは、現場の方々の力です。それぞれの河川事務所やコンサル会社で長らく地元の環境を見ている方々には、それぞれの場所の変化の方向を感知しやすいと思いますし、その地域の高度成長期以前の水環境はどうだったかなどを、ご自身の体験や、ご親戚などのお話から聞いている可能性も高いと思います。その場でどうすればサステナブルなのか、ヒントが得られやすいのではないでしょうか。
関連して、面白いデータがあります。江戸時代が進むにつれ、近畿、東北などの地域単位で比較した人口の最大と最小の比が、だんだん小さくなったのです。これは、人口が集中するのではなく、それぞれの風土に適した人口がそれぞれの地域にばらけることで、日本の環境を最大限に生かして、持続的に3000万の人口を養っていたことを示していると思います。
ある研究会で100分にわたって、こんな話をさせていただきました。この研究会では話した内容を冊子にまとめてくださるそうで、怠け者の私には文章を入力する手間が省けて大助かりです。今から完成が楽しみです。