島根県の人口がいつのまにか大正時代を下回っていたとの話題が、ネットやテレビで流れていました。私は人口減少自体はネガティブに捉えておらず、日本の最適人口は江戸時代末期の3000万人だろうと過激なことを考えているほどです。
ただし島根県の場合、減少の質が問題です。自然減というよりは、若年層が県外にでることで減っているからです。なぜ若年層が県外にでるか、それは島根県独自の魅力をおろそかにしてきたからだと思います。
島根は出雲大社が建てられた頃、既に日本の中心のひとつでした。当時の技術である程度まとまった人口を養えたのは、自然環境が恵まれていたからだと思います。実際、内水面漁業資源ひとつとっても、島根県ではつい近年まで川では鮎が豊富に取れ、湖ではウナギやエビが豊富に取れていたのです。
ところが最近はヤマトシジミさえ漁獲量首位の座を青森県に奪われるまで、水環境がガタガタになっています。なぜ鮎が減ったのか、シジミが減ったのか、原因はほぼ解明されていて、どうすればよいかも分かっているのに、それができないのが今の島根県です。県独自の判断で、国がやらないことをやろうとはしないのです。
こういう言い方は科学的ではありませんが、島根県は八百万の神様をないがしろにしてきた気がします。たとえば宍道湖は近年、アオコにおおわれることが多くなりました。出雲大社ができて以来ごく近年まで、宍道湖がアオコにおおわれることなどあったでしょうか。この地方では10月は神在月と言って、全国から集まった神様が宍道湖の上を通って斐伊川の神立橋まで行き、そこからそれぞれのお国に帰っていくと言われています。そんな、神様達が通る宍道湖をアオコまみれにして平気でいるのは、罰当たりだと思います。
そんな島根県ですが、宍道湖についてはかつて「アオコの湖にしてはいけない」と日本で初めて、国が始めた大型公共事業を中止に追い込んだ知事がいました。当時の知事は国側の委員会が提出した「宍道湖を淡水化しても水質は悪くならない」との報告に疑念を抱き、独自に全国の当時最高レベルの研究者達に依頼し、「助言者会議」を結成しました。助言者には西條八束先生もおられました。この助言者会議が科学的な検討を行った結果、宍道湖を淡水化すると水質が悪化すると結論したことから、宍道湖淡水化の延期を申し入れたのです。
このまま島根県で人口流出が続き、流域の自然が荒れ果て、その結果、恵まれた内水面資源までもが失われる事態を看過するのかどうか、知事の影響は大きいと思われます。
内水面漁業の再生は、日本全体にとっても重要な課題です。現知事の任期は来年4月29日だそうです。島根県から日本の内水面漁業を変えてやるくらいの意気込みのある方が、次の知事に選ばれてほしいものです。