脳脊髄液減少症の診断基準

脳脊髄液減少症の研究会で先生方の報告をうかがっていて、この疾患はその発生原因の性格から、クリアな診断基準がそもそも出せない可能性があるのではないかと感じました。
脳脊髄液減少症」と呼ばれている疾患の原因が髄液漏れかどうかは、ブラッドパッチではなく、切開して、確かに穴があって髄液が漏れていることを確認した部分を縫合して塞ぐ手技で良くなった例が報告されていましので、確実なんだろうと思います。
では漏れると何がよくないのかについては、水分を補給して横になるだけで回復する例があることから、脳内の髄液が適量より減っているから、という点もほぼ確実だろうと思います。
子供の時に発症し、成人後にEBPをしてもなかなかよくならない例からは、現在は漏れがなくても髄液が適量より低い状態が恒常的になってしまう場合があることを示していると思います。このような場合は、今現在漏れているという画像は得られないでしょう。しかし恒常的に髄液が少ない状況が引き起こした変化が、脳には生じていると考えられます。
以上から
1.漏れているという画像は得られるが、脳には影響が及んでおらず画像には表れない。
2.現在は漏れていないので画像には表れれないが、脳には影響が残っていて画像に表れる。
3.画像で判断できないほど弱いか間欠的に漏れているので、映し方によっては画像に表れない。また脳でも、長期そのような状態で影響が表れている場合と、まだ画像に表れるほど変化してない場合とがある。

などの場合が想定されます。そして、それぞれの程度によって起立頭痛など、障害の内容や程度も変わるのかもしれません。このような疾患の場合、漏れの画像だけ、脳の画像だけ、特定の症状だけ、もしくはそれら全てを満たすことを診断のガイドラインにすることは、疾患の性格から、そもそも不可能ということにならないでしょうか。

研究会では、なぜ成人では女性患者の方が多いのかが、何度かコメントされました。また子供の脳脊髄液減少症患者には、家族もそうだという例がかなりありました。このことは何らかの遺伝因子、もしくはその家族が暮らす環境に、何らかの、この疾患を起こしやすい要因が潜んでいる可能性を示しています。環境中の化学物質が原因である可能性、やっぱりあるのではないかとの意を強くしました。