復活した水草は極相なのか?

昨年6月29日に紹介した「琵琶湖の水草問題の現状と課題」の記録集が届きました。当日のご講演の口述とパワーポイントがフルカラーで印刷されています。一時は消滅した沈水植物帯が復活すると、どのような問題が生じるのか、この記録集は、その最先端の報告だと思います。残念ながらネットでの公開はされていないようなので、沈水植物再生に関心を持っている方には興味深いと思われる内容をご紹介します。
浜端先生の「琵琶湖の沈水植物群落の変遷と水質変化」によりますと、1980年代の琵琶湖では、外来種のコカナダモが波当たりの弱いところに分布し、強いところは在来種でした。1994年に、夏場としては55年ぶりの顕著な水位低下が起こって以降、琵琶湖南湖では沈水植物が大規模に繁茂するようになり、それとともに透明度の増加と、クロロフィル、TP、TNの減少が生じました。水質についてはこのように好ましい変化が生じたのですが、航路障害や、打ち上げられた草からの腐敗臭が問題になっているわけです。
では、琵琶湖の沈水植物は今後どうなるのか、中国のエルハイ湖の例が紹介されました。エルハイ湖でも、水位低下が原因となって、沈水植物が増加しました。しかし、その水草を刈り取って、湖内に設けられた生け簀で飼育するソウギョやハクレンに餌として与えるようになり、おそらくそれが原因でアオコが発生し、以後、沈水植物は衰退したそうです。
以上の知見から琵琶湖の沈水植物が今後どうなるかを以下のように考察されています。現在の南湖の水草は背が高く分散型(背丈の高いものや流れ藻になるもの、コカナダモやクロモなど)のものが優先していて、流れ藻問題やスクリューに絡まるなどの問題が起こっている。しかし沈水植物の繁茂によって透明度がさらに増加すると、背の低い、定着型(地下茎を発達させるもの、センニンモやネジレモなど)のものも安定して繁茂できるようになり、やがては、毎年発芽する分散型よりも優占する可能性がある。そうなれば、現在ほど、沈水植物の繁茂が問題になることはないだろう。
おそらく何もしなければそのように遷移すると考えられるが、下手に刈り取ると、分散型のものの分散を促進してしまうことになるかもしれない。管理するとすれば、分散型のものが発芽する時期に、水位を下げないことだろう。