牛乳の生化学と微生物学

下記の本の著者、小寺ときさんに出会ったのは、博士課程の学生のときでした。アメリカで飲んでいた牛乳と日本のとでは全く違っていて、それがどうしてか分からぬまま、体に負担なく飲むことができたアメリカの牛乳と同じものを探し歩いていました。その頃、大手メーカーが消費者に謳っていたことではなく、小寺さんが主張されていたことこそが、生化学や微生物学からも正しいことでした。実際、その方面の国際誌を調べても、小寺さんの方が正しいことが分かりました。

あれから30年近く経った今でも、同じ事を解説しなくてはならないのは、小寺さんにとってどれほど悔しいことでしょう。それでもイチからこの本を書かれた小寺さんは、立派です。

ちなみに彼女はこの本の初稿を、ガンの手術と治療で入院しているときに、記憶だけで一気に書き上げました。幸い今は退院されていますが、当時は、もしかしたらこのまま出れないかも、と覚悟を決めて書かれていたのかもしれません。

ずっと主婦という肩書きしかなかった方ですが、自然科学の知識と考え方にもとづいて、生活をいかにサステナブルなものにするのか、そして真剣に生きるとはどういうことかを、小寺さんから学んできたと思います。

(補足)
母乳だけで育てた私の子ども達は、保育園では間違って粉ミルクを飲まされると吐き出したような感覚の持ち主ですが、牛乳についても、ノンホモ・パス乳という世界スタンダードなら飲めますが、日本の超高温で滅菌された牛乳は、体質的に飲めません(無理の飲んでも吐きそうになる、と言います。アメリカから帰って日本の牛乳を飲んだときに私も感じたことです)。
子どもの頃は爪が柔らかくて曲がってしまうのに困っていた私が、今では年齢の割に骨密度が高いのも、小寺さん達が作り上げたノンホモ・パス乳を飲み続けているからだと思います。

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本物の牛乳は日本人に合う ノンホモ・パスチュアライズド牛乳の話
小寺とき 著

定価:1,470円 (本体1,400円、税70円)A5、180
ISBNコード:9784540081866
発行日:2008/07
出版:農山漁村文化協会(農文協)
(出版社による解説)
牛乳が合わない日本人が多いが、これは日本の牛乳の90%以上が国際的に認められた作り方をしていないことによる。国際的に権威のある専門家からもジャパニーズ・バージョンと笑われる牛乳が日本の主流だ。1982年、著者らは群馬県にある酪農業協同組合の門を叩き、大乳企業の圧力など多くの壁にぶつかりながらも、日本で初めてのノンホモジナイズド・パスチュアライズ牛乳の生産にこぎつけた。乳酸菌や消化吸収のよいカルシウム、酵素、ホエー蛋白などが豊富に含まれ、おいしくて子どもや高齢者の体にも優しい、正しい牛乳の開発物語。