胎生期環境と遺伝子の相互作用

化学物質問題市民研究会」のニュースレター「ピコ通信」の最新号(120号)に、6月10日に開催された環境ホルモン学会第19 回講演会の講演「胎生期環境と遺伝子の相互作用からみた疾病素因の形成-」の概要を伝えた記事がありました。その冒頭をペーストします。
いつものように居室の扉わきに貼っておきますので、続きはそこで読んでください。
なお同じくピコ通信をお伝えした6月27日記事に、本日コメントが寄せられたので追記しました。

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胎生期の低栄養と成人期の疾病リスク一成人病胎児期発症(起源)説一
早稲田大学胎生期エビジュネティツク制御研究所 福岡秀興さん

多くの疫学研究からは、生活習慣病と称されている成人病は、受精時、胎芽期、胎児期、乳幼児期にその素因が形成され、そ
れ以降変化せず、その後の環境の作用を受けて疾病が形成される事が明らかになりつつある。多くの疫学調査が大規模に展開されており、この考え方はほぼ間違いないといわれるに至っている。
現在この考え方はさらに発展し、健康と疾病の素因は受精時から乳幼児期に決定されるという広い概念になっている。
この説は、次世代の健康を確保するには、環境ホルモン、妊娠前を含めた若年女性のライフスタイル、食育、育児形態、更に社会構造までを根底から見直す事をしなくては本質的な次世代の健康が確保できないという、パラダイムシフトすら引き起こす概念に発展してきている。胎内・乳幼児期の遺伝子と環境との相互作用により遺伝子発現制御系の変化が生じ、これが出生後の健康・疾病リスクを規定するというのが、この説の基本である。
同じ遺伝子配列を持つ人々であっても、成人病の発症リスクは全て同じではない。それは胎生期の遺伝子と胎内環境との相互関連で形成される素因に違いがある事によると考えられる。場合によれば、世代を超えて持続していく。しかし、疾病の発症
を考えると、それは素因が形成されるのみであり、出生後の生活習慣次第で、疾病を発症しない場合もあり得る。
出生体重と疾病リスクの関係はU 字型をしており、ある体重から小さくなると共に、また大きくなると共に疾病発症リスクは上昇する。日本では低体重児の増加(次頁図参照)、中国で高体重児の増加があり、両国で共に2 型糖尿病(日本人の患者のほとんどが2 型)が増えている事が印象的である。しかし両者の発症機序は異なっており、低栄養暴露で起こる素因の形成機序について考えてみたい。