お茶の水で開かれている、西條八束先生と奥様の個展に行ってきました(詳細は10月15日記事参照、11月15日まで開催)。
画廊の壁を埋め尽くすように先生と奥様の絵が掛けられていて、これほどたくさんを一度にというのは初めてなのだそうです。
山、遺跡、木々、町並みなどに混ざって、水のある風景もいくつかありました。木崎湖は当然ながら、長白山の池や滝、アラル海、バイカル湖、レマン湖、八郎潟。1957年の航海中に描かれた八丈島や鳥島のスケッチもありました。
どれも先生のお人柄をしのばせる、おおらかで暖かな絵ですが、例えば「パイネの角(パタゴニア)」「モンテローザ」など圧倒されるような形状をど〜んと描いた絵もありました。娘さんいわく「そういう圧倒的なものも、父はどこかで追っていたのかもしれません」
いつかは画集を出していただければと思いつつ、奥様のご許可を得て、2枚だけカメラにおさめました。ひとつはアラル海を描いた2枚の絵の1枚で、全員後ろ向きで表情は見えないのですけど、この水鳥達はきっとのんびりゆったり水面と戯れているに違いないと思わせる絵。もう一枚は大木を見上げた空に力強い雲。急に退院と言われて、奥様が自家用車を取りに帰っている間にササッと描いてしまったというその水彩画のタイトルは「退院の日」。2004年7月とありました。
このまま名古屋まで帰るというカメラマンの方とお茶の水までご一緒し、「目線」についてお話をうかがいました。うまく全体が入らないとき、ちょっと下の方から上向きの目線で撮ると、枠が広がるそうです。また人を撮るときも、上向き加減の目線の方が、見下ろす目線よりその人らしさがでるのだとか。「見下ろすと分析的というか、威圧的というか、そんな感じになりますね」
そう言えば西條先生の絵は、たとえば町並みの絵にしても、高いところから見下ろすこともできたのでしょうに、やや上向きの目線でとらえた光景ばかりだったような気がします。西條先生はいつも、空を見通す目線で物事を見ておられたのかもしれません。