作文は苦手?

日本は技術立国でここまで来たんだから、もっと理工系の学生が増えた方がいいんじゃないか、そして技術畑だけでなく自治体や官庁などにも理工系が増えていいんじゃないかと、ここにくるまではそう思っていました。最近はちょっと考えを改めています。
社会にでたら報告書とか企画書とか、仕事の重要な部分で作文が必ずでてきます。伝えたい内容が伝わる文書が書けないなら、どんなにすばらしい能力があっても、マネージメントはできません。しかし陸水研の日本人学生を見ていると、必要な書類を作文できるという観点からは、マネージメントできる人材として文系を採用したくなる気持ちも、わかるような気がします。
学部2年まで文系だった私が取っていた科目の成績評価は、毎週とか隔週、もしくは学期末にレポートなど、作文の締め切りがやたら多かった記憶があります。教養の時から文章を書く機会が多かったためか、文科III類ロシア語クラスの同級生のうち二人は単著を出していますし、ある芸術の評論を専門誌に毎号掲載していた同級生もいます。彼らと同窓会で話していると、書くだけではなく、話題の広さにもついていけないものを感じることがしばしばです。
理工系の学生が専門を絞って実験・観測を重ね、新しい発見をするのは当然のことです。しかしそれだけで終わっては成果を誰も認めてくれないわけで、認知されるためにはピアレビューのある学会誌に投稿することが不可欠です。学会誌ですから専門用語がそのまま使えるなど、一般に広く解説するよりははるかに小さい労力と総合力しか要しないはずなのですが、学会誌に投稿するための文章さえ、陸水研の学生さん達にはハードルが高いようです。これから文系出身者と混じって報告書とか書かねばならないのに、修士の間に文章を書く訓練をしないで大丈夫だろうかと、真剣に心配になります。投稿論文を書くことで、総合的にオリジナルを提案する文章を書く能力を養ってもらえればと思っているのですけど。