博士論文公開発表会

陸水学研究室・田林雄君の博士論文公開発表会を下記の要領で開催いたします。発表会に続いて行われる審査をパスすれば、私が指導した初めての博士になります。


題目:近代以降の人間活動が河川水質に与える影響
日時:2009年1月9日(金)10:00−11:00
場所:東京大学大学院新領域創成科学研究科 環境棟5階 講義室


この論文の研究は序論と結語をのぞく4つの独立した章から構成されています。4つめの章は研究全体のまとめと今後の展望も含んだ内容となっています。
最初の章では都市化が進んだ地域で河川水質と流域の土地利用のGISデータを統計解析して、都市化に伴い河川中の主要イオン濃度がどのように変わるのかを検討しました。ふたつめの章では、過去50年間に急速に都市化が進んだ日本で、実際にどのように河川水質が変わったかを文献調査から検討しました。3つめの章では、そのような都市化がその場の水質だけではなく近郊の森林域渓流水に影響を与える可能性を、主要イオン濃度、硝酸の安定同位体比、酸性雨データなどから検討しました。4つめの章はこれまでの結果を受けて立てた仮説を検証するために、地理的に特徴的な場所にサンプリング地点を設けて調査し、結論を導きました。その4つめの章をもう少し詳しく書くと下記になります。

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流域の上流部に位置する森林域における渓流水の窒素濃度は従来低いとされてきたが、近年、関東地方の渓流水で高濃度の硝酸イオンが報告されている。本発表では予備調査で高濃度の硝酸イオンが観測された荒川上流域において、多地点で渓流水のサンプリング・分析を行い、その要因に関して、流域の属性や大気降下物が渓流水質にもたらす影響について検討した結果を報告する。
日本において、ダムサイトは河川上流の森林域に設けられることが多く、上流域にみられる高濃度の硝酸は水資源の安定供給に多大な影響を与えると考える。本発表では、ダムにおける水資源管理や今後の建設計画に寄与する基礎データを提供すると考えられる。


公開発表会にはどなたでも参加いただけます。ご関心をお持ちの方のお越しをお待ち申し上げます。