化学物質過敏症を「気のせい」にするのは敗北宣言では?

化学物質問題市民研究会のニュースレター「ピコ通信」127号が届きました。その中から「厚労省シックハウス症候群対策マニュアル問題/厚労省に責任をただす公開質問状出す」との記事をご紹介します。
1 月9 日付けで厚生労働省健康局生活衛生課が、「シックハウス症候群に対する相談とマニュアル」(以下 マニュアル)を各都道府県、政令市、特別区の衛生主管部(局)関係各位にあてて送付しました。送付に当たり事務連絡として「「シックハウス症候群の実ハウス対策の推進に御活用いただけますようお願いします」と書かれていたそうです。

ところがこのマニュアルには化学物質過敏症心因性疾患であると強く示唆するという問題点がありました。そこで3 月9 日付で化学物質問題市民研究会を含む46 団体名で厚労省あてに公開質問状を送ったそうです(全文はhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/shiiryou/kouroushou/090309_Open_Letter_Kourou.pdfでごらんになれます)。

以下、今回のマニュアル送付がどれほど深刻な悪影響を及ぼしかねないか、公開質問状から抜粋します。この質問状に対して厚生労働省は、「化学物質過敏症についての記述については、研究班が過去の文献の整理をしたもので、化学物質過敏症心因性の疾患であることを示したものではないと承知している。記述は執筆をした研究班の知見であって、厚生労働省の公式見解ではない。」との趣旨の回答をしたものです。

脳脊髄液減少症も、長い間「心因性=気のせい」とされてきました。そこでは下記で危惧される弊害が現実になっていました。しかしこの症候群を発見した篠永先生は「気のせいが原因というのは、自分には分からないと言っているのと同じ。私は原因が分かるまで、あらゆる方法で調べたいと思います。」と言われていました。
「気のせい」が原因とする医師は「気の力で○○が治った!」というのも認めるのでしょうか。

以下、公開質問状の抜粋です。

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2.このマニュアルでは明らかに「化学物質過敏症心因性疾患」であるとの見解が示されています。化学物質過敏症患者の検査所見がみられないと何度も書かれていますが、貴省は、他の厚生労働科学研究事業研究班により報告されている他覚的検査所見の存在については把握していますか。また、化学物質過敏症に関するこのような見解についてどのように考えますか。

3.家族や関係者、市民からの問い合わせに、保健所職員がこのマニュアルをもとに回答することにより、家族が精神的なものと誤解し、早期に適切な治療が受けられない、必要な環境改善がとられない、患者が二次的な精神的苦痛を受けるなど、患者が不利益を被る恐れがありますが、実際にそのような不利益を患者が受けた場合、どのように責任をとられますか。

4.現在、全国の自治体でHPやポスターでの化学物質過敏症に関する啓発などの取り組みが広まりつつありますが、今回の対策マニュアル配布はこのような自治体の取り組みを後退させる恐れがあります。今後地方自治体がこのマニュアルを理由に患者の要望を退ける可能性もあり、その場合多数の患者が不利益を受ける可能性が否定できません。そのような場合に国からはどのような説明を自治体にしていただけますか。

(追伸)
ピコ通信の最新号は、大学の私の部屋の扉に貼ってあります。ご自由に閲覧ください。バックナンバーを読みたい学生さんは、私までメールください。
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