危険も樹林化も防ぐ

読者の方から、近所の川についてご質問がありました。蛍がいっぱい飛び、「環境がいい」と言われている一方で、ごろごろ石の河原がここ10〜20年の間に変わり、背の高い葦のような雑草が覆い茂るようになったのだそうです。平行して川の石の黒光りが減り、石自体白い粉をふいたように変わってしまったとのこと。下水が通って10年以上経ち、環境が良くなったと思っていたのですが、これは環境の悪化なんでしょうか?環境が良くなっているのでしょうか?とのお尋ねでした。

それで私は、「現場を見ていないので間違いがある可能性大ですが、石の河原に土がたまり、雑草が生えることができる環境になったということは、いわゆる「樹林化」だと思います」、とお答えしました。8月に現地調査した屋久島には大きなダムは1カ所しかないのですが、土砂崩れが多い島なので至るところに砂防堰堤があって、その下流側が樹林化していたからです。

そうしましたら、「確かに、河川改修で砂防ダムが増え、川幅いっぱいに流れるほどの水量も年に数回になっています。」とのお返事をいただきました。やはり、と思うとともに、現在の工法ではあと10年か20年で、日本の河原から礫河原が無くなってしまうかもしれないと思いました。どうすればよいか。

オランダの東スヘルデ防潮堤の建設経緯が参考になるかもしれません。高潮被害で数千人の死者が出たことを受けて、オランダ政府は防潮堤の建設を決めました。しかし湾を締め切ってしまうと自然環境が破壊されると反対意見も多かったので、オランダ政府は国民投票を行いました。いったいどんな投票用紙だったのか分かりませんが、その結果は単に「作る」「作らない」ではなく、「高潮を食い止め、かつ環境も破壊しない防潮堤を作れ」だったのです。それで政府は今までに無かったそんな防潮堤の技術開発を始め、世界で初めて、超巨大な開閉自在の防潮堤が沖合に作られたのでした。

砂防と樹林化の問題も、解決できないことはないような気がします。