世界一しか目指さない!

テレビ東京系で月曜22時から放映されている「カンブリア宮殿」。息子がたいてい見ているので家事をしながら私も時々眺めています。
中でも、1月25日放送「世界一しか目指さない!奇跡の成長を遂げた栃木の田舎企業」は、ビデオ撮っとけばよかったとすごく後悔した内容でした。
その会社では、社員全員が「世界一」であることを課しています。担当した商品が世界一であると社内の会議で説得できなければ、生産中止。「だって、世界一でなければ、他の会社のを買った方がお客様のためじゃないですか」と社長さん。
全員が世界一を可能にする秘訣は、ニッチを狙うこと。
「うちは針金屋なんです。世界で何人、針金の先のことばかり考えている人間がいるかというと、たぶん5人いない。ならばその5人の中で1番になれば、世界一なんだと」
シャジクモという植物があります。ヨーロッパでは石灰化するので枯れても容易に分解せず、湖沼の水質浄化に効果的とされています。日本では絶滅危惧種になっているこの植物を復活させて水質浄化を図るというのをKさんのテーマとして、シードバンクで育てられたシャジクモを頂いて来ました。流しで泥を落としながら「これ、本当に水質浄化するんだろうか。何かフニャフニャしてるし、臭いし、すぐ腐りそう」「私もそう思います」から始まって、Kさんは「日本のシャジクモは本当に石灰化しているのか」を考え続けてきました。日本の水は軟水だから、ヨーロッパの硬水並にカルシウムを添加したらどうだろう。実験の結果、表面にカルシウムが沈着してはいるけど、シャジクモの石灰化はバンド状に生じるはずなのに、そうなってない。なぜだろう。。。
という感じで2年近く、シャジクモの石灰化を考え続けた結果Kさんは、50年以上誰も疑っていなかった「シャジクモの石灰化はアルカリバンドで起こる」を覆す発見をしたのでした。この発見は、植物はなぜ石灰化するのかという大きなテーマにも一石を投じる可能性を秘めています。
「あなた絶対、研究に向いているから、進学すればいいのに」「いえ、私は研究には向いていないと思います」
と本人が言うので、この研究の発展は後輩に託させることになりそうです。
陸水研は、メジャーなテーマを他の研究室と競ってしのぎを削る、という場ではありません。修論研究では自分が関心を持った分野(何もとっかかりがなければ、ここが面白そう、という提案はします)でニッチを探し出し、2年間それだけを考え続けて、世界一を目指してください。それはきっと、社会に出てからも通じるやり方だと思います。